大空に乾杯
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スチュアデスのタマゴである滝村ゆり子はきびしい二ヶ月の訓練を経て、やっと処女飛行に柔びたつことになった。
初行の日、胸ふくらむ思いのゆり子を北合妻がオンボロのオート三輪で羽田空港まで送った。試は数日前から滝村家の庭の花理の手入れに通いはじめた東京園芸大学の学生だった。談はビックのカーネーションを一治初飛行のお祝いにゆり子にあげたが、それを見ていた先輩のスチュアデス矢部朝子から、ピンクのカーネーションの花言葉がアイ・ラブ・ューだときかされて真赤になってしまった。
ゆり子が初塔乗した関名俊太郎機長のボーインクジェット大阪行使に乗ったスチュアデスはこの朝子と関名の恋人である教官の工藤冴子だったが、あがってしまったゆり子はさっそくアナウンスでミス。しかし客の立花という老人に優しくはげまされて気をとりなおし、あとは無事に大阪までの処女飛行を終った。
翌日、処女兼行から帰ってきたゆり子は、羽田空航で、丁度ペコニヤ・ビクタというヒマラヤでしか咲かない花のタネを受け取りにきた識とばったり。またオンポロ三輪で送ってもらうことになったが、なんたることか高速道路でオート三輪はエンコ。運よく後からきた朝子のスポーツカーに拾われたが、無理に誠から掴まされた紫のスミレが、私に恋をしてくださいという花言葉だときいて、ゆり子はあきれてしまった。
数日後の夜、ゆり子が一人で留守居をしていると、庭でゴソゴソと音がし、誠が泥だらけの顔をだした。近くまできて急に花垣が気になって寄ったという誠の手に、こんどは熱烈な恋を示す紅いバラが握られていた。やがて帰宅した父親の建造と仲良くウイスキーを飲みはじめた銭は、はにかみながらも情熱的に自分の小さな夢を話した。誠の夢は自分のお花畑を持ち、その花の中で、太陽をいっぱい浴びて、一人でおへソをだして寝っころがることだった。それを聞いたゆり子はすっかり感激してしまった。
ベコニヤ・ビクタが花開く予定の日、ゆり子は朝子のボーイフレンドでテレビタレントの町田のスポーツ・カーで、園芸大学の温室へいった。一偶のガラス・ケースの前で、誠が一心にペコニヤ・ビクタのツボミを見つめていた。そのの情熱にキラキラ輝やく真剣な瞳を見て、一瞬ゆり子は打たれた。だが花はとうとう開かなかった。それだけでなく、町田が騒々しかったことから、誠たちのガール・フレンドである冴子の妹ミチ子とゆり子は心ならずも口争いをして、温室を飛びだしてしまった。
二度目の飛行のとき、信一という男の子が酸素欠乏症になったが、ゆり子たちの処置がよかったため危うく一命をとりとめた。その信一が財界の大立物立花啓佐衛門の孫だったことからゆり子、朝子、冴子の三人は立花邸に招待された。立花邸にいったゆり子は立花が処女飛行のとき僕しくはげましてくれたあの老人だったのにびっくり、そのうえその招待が実は、ゆり子を気に入った立花老人が末息子の啓介とゆり子をお見合いさせようと仕組んだものだと知って、二度びっくりした。
一目でゆり子が好きになった啓介は、そのゆり子をナイト・クラブに誘い、踊りながらゆり子に恋人の有無をたずねた。いきなりきかれてゆり子は、誠の名を口にした。
「目に情熱があるの。この頃の若い男の人たちから失なわれてしまった情熱の光が......。でも私が好きなだけ。一方通行なの」そういいながらゆり子は、ベコニヤ・ビクタを一心にみつめていた鉄の横顔を思いうかべていた。翌日、花理の手入れにきた妻が、ベコニヤ・ビクタを諦らめたといったとき、ゆり子は激しいロ詞で、意久地なしと識をなじった。
「ベコニャ・ビクタの花言葉は、勇気よ!斗いよ!」それを聞いた誠の目に、たちまち情然の光があふれてくるのだった。
ある日、ゆり子と朝子は冴子から相談を受けた。冴子はパイロットの関名と結婚を約束した仲だったが、昔の愛人が現われ困っていた。子供をおろしたこともあるという。その冴子の悩みをきいた朝子は自分の過去を話して、冴子をはげました。朝子も渡欧した建築デザイナーに失恋したのだった。「苦しかったわ。でも過去にいつまでもこだわるなんて、愚かなことよ。大切なのは、明日よ、未来よ」ゆり子は別の人間をみるように朝子を見直した。朝子の生活態度はゆり子には理解できないようなことが多かった。自分のマンションや自動車を時間ぎめで人に貸したり、太郎という学生と肉体関係なしに同棲したり、ボーイフレンドも多く。派手で計算づくでドライだった。しかし、それは苦しい経験から生れた彼女なりの精いっぱいの生き方だったのかも知れない。
冴子はありのままを関名に話し、勿論関名も過去などを問題にしなかった。この冴子の恋はゆり子の心を動かした。これまであと啓介の間を揺れ動いていた自分の気持をどちらかにきめようと彼女は思った。
ゆり子は啓介と誠につづけて会った。そして同じように振舞い、二人の反応を調べた。夜の公園で酔ったふりをするゆり子に、啓介はあくまでもマジメにゆり子に愛を誓ったが、誠はまるで反対に荒々しくゆり子を扱った。その結果、ゆり子は啓介になにか物足りなさを感じ、誠に男らしさを感じてひそかに満足している自分を見出したのだった。ゆり子が啓介との縁談を断わると、母親の菊子は残念がったが父は自分の経験にてらして賛成した。建造は菊子との発のない結婚をいまでも悔いていた。愛していた看護婦と別れて病院長の娘である菊子と結婚したおかげで、社会的な地位を得たものの人生で一番大切なものを失った、と庭造は考えていたのだった。はからずも父と母の秘密を知ったゆり子は、悩んだ末に両親に離婚をすすめた。娘の思いつめた心を知って菊子と魅造は反省した。そして、夫婦としての再出発をゆり子に誓うのだった。
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- ジャンル
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制作国
日本
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制作年
1970年以前
- キャスト
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スタッフ
企画 : 高木雅行 原作 : 若山三郎(青樹社・刊) 脚本 : 白坂依志夫、中野顕彰 監督 : 斎藤武市 撮影 : 萩原憲治 照明 : 大西美津男 録音 : 古田恒夫 美術 : 坂口武玄 編集 : 近藤光雄 音楽 : 小杉太一郎 助監督 : 斎藤和三郎 製作担当者 : 牛山正夫 スチール : 目黒裕司