彩流社 407件 人気順 新着順 歴史のなかの人びと 樋口映美 歴史を知る・学ぶ・考える、その面白さを呼び起こす! アメリカの奴隷所有者、日系移民殺害の噂、 19Cイギリス生活の中の石鹸……歴史の記録に残されていない人びと、 未解決の事件、それと共にある大きな世界の動き…… 歴史研究者たちが「人」に立ち返り、史料から多様な人びとの営みを 掘り起こす…その日常をともに紡ぐことの意味を問う論集。 2,090円 レトリックと哲学 中西満貴典 レトリック(修辞学)研究においては、 言語の本質を、対義的概念とみなし、 その構造が出来事の矛盾の構造と 相応関係にあることを洞察しようとしている。 ケネス・バーク研究から始まり、伝達媒体の相異と、 表現のしかたや発想様式のちがいとの連関性に、 研究の焦点は移っているが、 本書でも、〈文字/声〉の対比において、 それぞれのモード(表現形式や思考様式)の特性を 浮びあがらせることに専心する。 そして、これを契機に、目的物の探究のための資源が ジャンル横断的にひそんでいることに気がつくことになる。 〈文字/声〉の分節によって、さまざまな分野の問題 ――文学批評、思想史、科学哲学等――を切りとることが できるのではないか。 伝達媒体のちがい――〈文字/声〉あるいは、 それに対応する身体感覚のちがい(視覚/聴覚)――が、 各時代の表現形式やそれにともなう思考の様式と なんらかの関係があるのではないか、という直観。 それは、時間的スケールをひろげ、 ルネサンス期までの自然哲学と、 いわゆる近代科学のそれぞれの「知」の在りかたそのものを、 考えることを促すのである。 本書は、フーコー再読から、やがて 〈文字/声〉の区分が、 「近代的知/ルネサンスの知」という分節と、 パラレルな関係にあることが主題となっていき、 とりわけ、研究方法としては、本書構成上、 異なる対立軸の中間に、ジャンルをまたぐ論考を配置することで、 主題を複合的重層的に考察していくことを試みて行くものと なっている。 4,180円 アジア太平洋戦争新聞 太平洋戦争研究会 今年(2021年)9月18日は、日中戦争の発端となった満州事変が起きてから 90周年にあたる日でした。そして12月8日は、太平洋戦争の開始となった 真珠湾奇襲攻撃・マレー侵攻から80周年にあたります。 太平洋戦争は1941年(昭和16年)に突然始まったものではありません。 そこには「暴支膺懲」という尊大なスローガンで臨んだ中国との戦争、 さらには東南アジアを占領して、欧米の植民国家に代わって日本が盟主となる という妄執(大東亜共栄圏)が、その初まりにありました。 本書は、満州事変以降、15年にもわたる一連の戦争を振り返りながら、 日本が国を挙げて戦争へとひたすらに突き進む過程と、最後は銃後の民間人まで 巻き込ながら無条件降伏に至るまでを、「新聞形式」のスタイルを通して 時々刻々と描くものです。 日中戦争・太平洋戦争をテーマにした書籍は、ともすれば前述した満州事変や 真珠湾攻撃を初め、満州国の建設、ミッドウェー海戦、東京大空襲、原爆投下 といった重大な局面がフィーチャーされるのが常ですが、 本書では戦争が長期化する中での「銃後の暮らし」の様子も数多く取り上げました。 1938(昭和13)年4月の「国家総動員法」公布によって、人的・物的資源の全てを 国家が全面的に統制できるようになると、民間人の生活も戦争に密着にしたものと なります。やがてそれは衣料や食糧の配給制度、軍需工場への動員、「建物疎開」 「学童疎開」へと続いていきます。それでも、作家の吉村昭はこう書いています。 「戦争は一部の者がたしかに煽動してひき起したものかも知れないが、 戦争を根強く持続させたのは、やはり無数の人間たちであったにちがいない」 (『戦艦武蔵』)。満州事変から90年、真珠湾奇襲攻撃・マレー侵攻から80年を 迎えた今だからこそ、日本と日本人が選んだ「戦争」をもう一度見つめ直す 学びの機会として、本書は刊行されるのです。 2,420円 アメリカ社会の人種関係と記憶 樋口映美 アメリカ的な人種差別の構造と変遷を読み解き、歴史の再認識を問う! 18世紀末から今日までアメリカ社会で展開されてきた 人種関係史との対話。 先住の人びと、奴隷とされた人びと、移民として渡米した人びとなど、 異なる状況下で多種多様な人びとが紡ぎ出してきた 重層的アメリカ社会は、白人優位の人種差別が社会秩序として 刻まれてきた歴史をもつ。 その変遷を複雑な動態として個々人のレベルで捉えようと、 半世紀にわたって発表されてきた12の「作品」を収録。 今や人種差別問題は、「自分は何者か」「人とは何か」を問う 問題でもあり、その意味で本書は、歴史認識の変遷と歴史の問い直し の現状を射程に入れつつ、 今を生きる私たちに「あなたは何をどう考えどう行動しますか」と 問いかける労作である。 〔主な目次〕 まえがき ◆第一部 奴隷制時代の自由黒人とアメリカ社会 第1章 フランス/ハイチ革命の記憶と自由黒人(1790年代~1830年代) 三 フランス革命の「悪しき」影響 四 自由黒人デンマークの蜂起計画(1822年)――ハイチ革命を目指して 五 移住問題と自由黒人――忘却されるハイチ共和国 おわりに――フランス/ハイチ革命の忘却 ほか 第2章 自由黒人デンマークの蜂起未遂事件とチャールストン 二 奴隷とされていた人びとチャールストン――裁判から見える状況 三 奴隷制を基盤とする社会秩序形成 ほか ◆第二部 ウィルミントン事件の諸相 序にかえて ウィルミントン事件を見る視座 第1章 再建期のせめぎあい――ウィルミントンでの白人優越主義 二 黒人市民の活動開始――連邦軍黒人中隊に助けられて 四 民主党支配確立へ ほか 第2章 「白い革命」(1898年) 一 1890年代のノースキャロライナ州――「白い革命」の背景と展望 四 「白い革命」の担い手 ほか 第3章 「白い革命」下の黒人市民 二 「白い革命」の衝撃 三 黒人市民の進路 ほか ◆第三部 黒人コミュニティの可能性――シカゴの事例 第1章 黒人銀行家ジェシー・ビンガと仲間たち 一 起業するジェシー・ビンガ――様々な人びととのつながり 二 銀行という媒体に集う人びと ほか コラム ロズモンドさんにとってのビンガ 第2章 シカゴ黒人新聞『ディフェンダー』の子供たち ――ビリケン倶楽部の人種/国民意識(1921年~ 1942年) 一 「ディフェンダー・ジュニア」登場――人口増加、暴動、子供組織 二 ビリケン倶楽部の発展 ほか ◆第四部 歴史のなかの実態と虚像 第1章 白い肌の「黒人」――アレックス・マンリー 二 ウィルミントン事件のアレックス・マンリー 三 一〇〇年後のアレックス・マンリー再登場 五 アレックス・マンリーとは誰なのか ほか 第2章 1990年代の「文化戦争」――左翼ギトリンの思い 二 エリート文化をめぐる「文化戦争」──その多様な戦場 四 多文化主義をめぐる論争とギトリン ほか 第3章 20世紀アメリカにおける暴力の不可視化と秩序形成 ――キング象徴化と「カラーブラインド」の遺産 第4章 21世紀に続く? カラーブラインド――チャペルヒルの事例 第5章 歴史の実態とマスター・ナラティヴ ――活動家ブルース・ハートフォードとの対話から 4,290円 アラビアのマリア・テレジア銀貨 山崎祐輔 本書は、マリア・テレジア女帝とヴィクトリア女王を戴いた通貨の流通 という視点からみた、日本ではあまり馴染みのないアラビア半島の近代史 かつ国際関係史である。 貿易通貨のマリア・テレジア銀貨が内陸部、法貨のインド・ルピーが英国の 勢力圏で流通したのは国際政治の反映であった。「偶像禁止」のイスラム教義 に反するマリア・テレジア銀貨がなぜアラブ人に選好されたのか、 また、統治者がイスラム君主の条件を満たさずに外国の君主の肖像入り通貨を 認めるという、通常では考えられない現象の理由が何であったかを解き明かす。 「イスラムの教えの理解なくして中東は理解できない」との主張に反し、 外国の元首であるマリア・テレジアを戴く銀貨を使い続けたアラブ人が、 イスラム以前からの銀の純度と重さを重視する慣習に従っていたこと、及び、 インド洋とペルシャ湾での覇権を求めた英国とフランスの外交戦が与えた、 アラブ人の英仏に対する感情の違いから、反英感情の裏返しとしての マリア・テレジア銀貨への「リヤル・ファランシ(仏リヤル)」呼称使用が 生まれたことなどを、当時のアラビアで活躍した欧州商人、インド商人の 具体的な活動と共に描いていく。 【目次】(第1章)マリア・テレジア銀貨(第2章)レヴァント(東地中海) 貿易 (第3章)モカコーヒー(第4章)「リヤル・ファランシ(仏リヤル)」の呼称 (第5章)インド洋経済圏のオマーン(第6章)独立尚武の国イエメン (第7章)マリア・テレジア銀貨の廃止(第8章)英領インドの「飛び地」アデン (第9章)英国の湾岸進出とネジド(サウド家) への関与 (第10章)法貨でない通貨の流通理由 (第11章)イエメンとオマーンにマリア・テレジア銀貨が残った理由 3,300円 イスパニア国王フェリーペ二世に裏切られた男 荻内勝之 マドリード村歴史博物館にある歴史画に対し 25年ぶりの再会となったドン・キホーテ学者・荻内氏が 絵画に見出した「謎」とは…… 荻内探偵は、その絵の細部に仕掛けられた歴史的事件の 「秘密」を発見した。さて、その展開や如何に!? さて、史実をも記すとしよう。秘書官ペレスはフェリペ2世との確執から 逮捕され、1585年「役職剥奪」「宮廷追放(10年間)」「懲役2年」 「罰金」の判決が下る。拷問に負けずにペレスは脱獄しアラゴンへ行くが、 フェリペ2世は「アラゴン王」の名において、裁判所にペレスを再度起訴 する事態となり、異端審問にかけられることに。1591年、アラゴンでは それを引き金に「フェリペ2世が司法を侮辱」と暴動が発生する。すかさず フェリペ2世は鎮圧に軍を送ったのであった。その状況で、羊飼いに化けた ペレスはピレネーを越えナバラへと逃れ、その後は、1593年にイングランド へ行くこととなる。その地イングランドでは何度も暗殺の標的になり、更に 1595年には、アンリ4世の招きでフランスへ渡った三年後、漸く、1598年、 フェリペ2世が死去し、解放されたのだった。ペレスは1611年、パリで波瀾 の生涯を閉じることとなる。 3,300円 一九四〇 命の輸送 安田亘宏 「命のビザ」を繋いだ、名も無き者たちの物語。第二次世界大戦期、アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツの迫害を受けたユダヤ人の多くは、リトアニア日本領事館駐在、杉原千畝(すぎはらちうね)領事の発給したビザに命を救われた。その大量のユダヤ難民たちがナチスの魔手から逃れ祖国を脱出し、遠く日本までたどり着くことのできた背景には、若きジャパン・ツーリスト・ビューロー(現JTB)職員たちの尽力があった。歴史の表舞台には上らなかった、しかし確かにそこにあった、ユダヤ難民救出のもう一方の真実を描く。 2,640円 移民・難民・マイノリティ 羽場久美子 今世紀最大の社会対立を引き起こしている 移民・難民問題の本質を問う! なぜ移民・難民が出るのか。かつて労働力不足に悩み移民を 歓迎した先進国が今や移民・難民問題に揺れる── 欧州各国で高まるポピュリズムとゼノフォビア(外国人嫌い)の 現状とその要因を考える。そして、避けて通れない多人種・多民族が 共生する現実、マイノリティを包み込んだ生活と現状を検証し、最後に 日本における移民の現実と教育の実態と問題点を抉る多角的な論文集。 移民・難民受け入れが課題となっている日本にとっての問題提起の書である。 3,410円 英米文学、多彩な文学解釈への誘い 川成洋/吉岡栄一/伊澤東一 これほど刺激的な学問の領域があったのだろうか…? 個性豊かな書き手により、文学を中心に、歴史、宗教、音楽、演劇等を 縦横無尽に論じる新しい試み。 本書の白眉となるものは、ケンブリッジ大学のモウズリー博士の夏期講座の 講義録、シェイクスピアの「恋人たちの死」の論考である。 また、古典的名作といわれるシドニーの『アーケイディア』の成立、構造、 語りを精緻に論じた論考も含まれよう。 そして、今論集で注目にあたいするといえるものは、新進気鋭の 中堅・若手研究者たちによる詩論である。 ハーバートの詩におけるシンボルのメカニズムを 論証した詩論、トマスの詩とイェイツとの関係を探求した論文や キャロル・アン・ダフィの五番目の詩集についての詩論。さらには1960年代の リヴァプール詩における代表的な詩人の音楽活動との関係に論及したもの、 現代詩人のR・S・トマスの詩を「否定神学」の観点から論じたもの等である。 それらに加え、コンラッドの「勝利」論、マードック『ブルーの夢』、 H・D・ソローの「住まい」、トウェインの実像をめぐる論考ほか、 J・D・パソスにおけるスペイン内戦、シェパードのアイルランドと演劇、 アトウッド『またの名をグレイス』を論じたものまで、様々な論点をさらに 切り開こうとする意欲的な論考に溢れた論集が本書ということになる。 【収録内容】 I イギリス文学編 第1章 講義:世界を変えるシェイクスピアの二組の恋人たちの死 チャールズ・モウズリー(伊澤東一訳) 第2章 子供の反逆・『恋の骨折り損』と『御意のままに』 杉浦裕子 第3章 シドニーの『アーケイディア』 村里好俊 第4章 ジョージ・ハーバートと聖なる贈物のパラドックス 山根正弘 第5章 コンラッドの『勝利』論 吉岡栄一 第6章 アイリス・マードックの『ブルーノの夢』論 山本長一 第7章 ディラン・トマスの「言葉に彩り」とW・B・イェイツ 太田直也 第8章 キャロル・アン・ダフィの『ザ・ワールズ・ワイフ』における 女性の詩人たち 石田由希 第9章 リヴァプール詩、音楽、そしてリリー・ザ・ピンク 木村聡雄 第10章 R・S・トマスの主題の変遷と神の存在証明 永田喜文 II アメリカ・カナダ文学編 第1章 H・D・ソローの小屋あるいは住まい 奥田穣一 第2章 『マーク・トウェイン 完全なる自伝』に探るトウェインの実像 有馬容子 第3章 ジョン・ドス・パソスの一九三〇年代の戦い・スペイン内戦体験 川成洋 第4章 サム・シェパードのアイルランドでの再生 3,850円 エル・グレコ祭壇画物語 西川和子 スペイン史で読み解くエル・グレコ 大胆な構図と独特な色彩でマニエリスム期を駆け抜けた エル・グレコの数々の作品に描かれた人物たち。 彼・彼女らはいったい誰なのか?なぜそこに描かれたのか? 2,420円 おやこで楽しむ講談ドリル 宝井琴星/宝井琴鶴/稲田和浩/小泉博明 日本の話芸「講談」をさらに学ぼう! 前著「おやこで楽しむ講談入門」(彩流社刊)において、 講談に入門をはたされた親子らへ、実際に話芸を習い覚え、 上達にまで導くやり方を手取り足取りお伝えする。 本書の特徴 〇こどもが声を出して読める(小学校高学年向けルビ付き)。 「世話物」「怪談」「武芸物」などを子ども向けに用意。 〇ひとつの話を見開きページにし読みやすく。 〇前著につづき、お話の歴史背景や解説も入れています。 〇イラストも入れて、より親しみやすく。 〇最後に、保護者向け、効果的学習法トリセツ付き。 いま神田伯山で話題となっている講談の物語には道徳教育に資する ものがあります。また話芸の「講談」を学ぶことで、道徳教育の 内容項目にある日本の伝統文化をも学べるのです。 要するに「講談」は「日本の伝統文化」「言語活動」「道徳教育」が、 三位一体となっている宝庫なのです。 1,430円 カオスの社会史 高橋和雅 多様な出自の人々が集う大都市シカゴの黒人集住地域の 生成と「生活空間」に焦点を当てた本書は、 これまで目を向けられてこなかった「生活空間」と、 その「生活空間」をめぐる微細なせめぎ合いを明らかにする ものである。 大都市に数多存在していた“路上マーケット”に象徴される 「せめぎ合う生活空間」「雑然とした生活空間」から生みだされる エネルギーや文化創造に対する斬新なアプローチ! 2,090円 記憶をめぐる人文学 アン・ホワイトヘッド/三村尚央 古代から現代までにいたる 哲学や文学の表現に表象された「記憶」が、 「歴史」や「忘却」「トラウマ」などを 鍵語にしつつ、 「記憶と書き込み」、「記憶と主体」、 「無意志的記憶」、「集合的記憶」 といった主題において、 プラトン、アリストテレス、ダンテ、 ジョン・ロック、デヴィッド・ヒューム、 ルソー、ワーズワース、ニーチェ、フロイト、 ベルクソン、そしてプルーストなどの 人文学的テクストから縦横無尽に読み解かれる! 関連書籍 『記憶・歴史・忘却』 (ポール・リクール、新曜社)をはじめ、 『記憶術』(フランセス・A.イエイツ、水声社)や 『記憶術と書物』(メアリー・カラザース、工作舎) など… 2,420円 紀行 忘却を恐れよ 立野正裕 コロナ禍により移動できなくなった旅人は 故郷へ日本国内へ「思索」の旅をする。 第1部では故郷・遠野を軸に「語り」の世界を追究し、 第2部では日本全国を舞台とした文学作品、映画作品を辿ることで 思考をめぐらした。 【目次】 第1部 第1章・花冷えの道 吉里吉里四十八坂 第2章・沖縄と遠野 三つの手紙 第3章・遠野物語の土俗的想像力 第4章・河童と羅漢 旱魃の記憶 第5章・語り部礼讃 遠野物語と千夜一夜物語 第6章・語り部の墓 佐々木喜善 第七章・忘却を恐れよ 大津波の跡 第2部 第1章・北海道への旅 朱鞠内湖 第2章・津軽への旅 龍飛崎 第3章・若狭への旅 水上勉・古河力作・徳富蘆花 第4章・土佐への旅 物部川渓谷 第5章・奄美大島への旅 田中一村 第6章・秋田への旅 戸嶋靖昌 第7章・精神の旅 宮本武蔵と独行道 2,860円 講談最前線 瀧口雅仁 向島の寄席「墨亭」席亭による新講談論! 令和の初日、個人的に向島に「墨亭」という寄席を開いた。演芸場の許可を取ったので演芸スペースではなく寄席と呼ばせてもらいたい。落語に講談に浪曲に、その他の日本の芸能を寄せ集める空間でもあるので「寄席」でもいいだろう。オープン時には神田春陽先生にお世話になり、今もお世話になっている。そしてそこから広がりを見せ、講談の会を多く開くようになった。オンタイムで聴いてきた講談に、資料から知り得た講談。そして今の講談に、これからの講談の姿といったことを思いつくままにあれこれ記してみたいと思う。ただし、東京の講談界についてがほとんどであり、偏った見方や意見になる可能性があるのは承知で、反論や異論が出ることは覚悟の上だが、そこからまた各人の講談の魅力が引き出せればいいのではないかとも思っている。 【目次】 (1)今、本当に講談ブームなのか? (2)神田伯山は釈場を復活させるのか (3)最初に聴くなら何がいいのか、そして誰がいいのか (4)講談と落語の違いとは (5)東京の講談界が二派に分裂している訳 (6)天の夕づるの“ポルノ講談”とは何だったのか (7)分裂し続ける上方講談界 (8)改めて注目したい現代講釈師(神田織音・神田茜・神田愛山・ 宝井琴星・宝井琴桜) (9)若手講釈師群像(田辺いちか・神田紅佳・宝井梅湯) (10)《資料》昭和61・62年の本牧亭風景~本牧亭の楽屋帳から (11)木馬亭講談会の魅力 (12)あの頃の落語色物定席での講談事情 (13)講談を「読む」ということ (14)講談はどこで聴けるのか (15)講談を「聴く」ということ (16)これは聴きたい!講談らしいネタ (17)連続物の楽しみ (18)やっぱり聴きたい「赤穂義士伝」 (19)新作講談の楽しさ (20)八代目一龍斎貞山、鬼籍に入る 1,870円 国家と実存 立川健二 個々人のアイデンティティ──私は何者か? 言語・民族・国家・宗教といった大文字の存在を根拠とするか、それとも個の実存に拠点を置く生き方を追究するか……。〈思想〉が内在的に〈学問〉と異質であるのは、たとえば言語一般あるいは特定の言語の記述と分析に終始するのではなく、いかに生きるか、どのような社会を作るかといった問いを立て、それに答えようとするからだろう。「どうなっているか」を明らかにすればそれで終わるのではなく、現代の人間がいまだに答えを見出していない問いを立て、それに答えようと試みる知的営為こそ、〈思想〉なのではないか。〈思想〉とは、既成のパラダイムを壊し、新しいパラダイムを生み出そうとする営為である。〈思想〉とは本質的にラディカルなのである。 [コンテンツ] 【I】ポストナショナリズムの精神史 ■〈思想〉とは何か ■〈精神史〉とは何か ■イエス、ポストナショナリズムの原点として ■見果てぬ〈共同性〉への夢─あるいは異和感の由来 ■ハイブリッドの精神─土着/外来の対立を超えて 【II】国家と実存 ■方法としてのトルコ─あるいは《日本近代の逆説》をめぐって ■ファシスト国家の起源─あるいは見果てぬ《共同性》への夢 ■〈アジア〉から〈東洋〉への転換─あるいは人種概念としての「アジア人」 ■実存的個人主義─〈個人主義〉と〈私人主義〉の根本的差異について ■〈表現〉への航行─ぼくはどうして『ポストナショナリズムの精神』を書いたのか(1)(2)(3)(4) 【III】民族、言語、宗教、国家 ■「ユダヤ人国家」の彼方へ─ユダヤ人/ユダヤ教徒をめぐる言語論的考察 2,860円 疾駆する白象 野上勝彦 あらゆる歴史は現代史である(ベネデット・クローチェ) コンバウン朝ビルマでは、第六代ボードーパヤー王(在1782 ~ 1819)が 1784年末、アラカン王国を制圧、当時上座部仏教の崇拝の的だった青銅製の 大牟尼仏を略奪し、同時に緩衝地帯はなくなり英領インドと対峙した。 ついで北部のマニプール王国、アッサム王国をも支配下におき、版図を最大に 広げ、列強国と角突き合わせた。 ベンガル州の平原プラッシーにおいては1756年6月23日、東インド会社が、 仏ベンガル太守の連合軍を撃破する。1764年10月には、ブクサールの戦いで ムガル帝国・アワド太守・前ベンガル太守の連合軍を破り、1765年8月、 アラーハーバード条約が締結される。これにより東インド会社は、 ムガル帝国からベンガル、オリッサ、ビハール三州での租税徴収権を獲得する こととなり、徴税官を介して財政基盤を固め、民間商社から政治機構へと転身する こととなった。財源を失ったムガル皇帝とベンガル太守は、単なる年金受領者に 落魄し、同じように度重なる戦争と飢饉により東インド会社も財政難に陥っていった。 1774年、140万ポンドの政府貸付金と引換えにしたノース法により、本国からの 規制をも受けることとなる。1784年8月13日、ピット政権はインド法を議会通過 させ印度庁を政府内に設けた。東インド会社は多額の国費を本国に支払いながらも 政府との二重権力の下、インドの植民地化を推進。ナポレオンの時代になる1806年、 弟ルイはオランダに王政を布いたものの、兄の指示に従わなったため1810年、 オランダはナポレオンの直轄領とされることとなった。 これを契機に、1810年~11年にかけては、ベンガル総督ミントーがオランダ支配下 のジャワ島を侵略しラッフルズを知事代理に任命、4年間統治させた。ラッフルズは 1819年、シンガポールをも開く。間もなく王は第七代バジドー王に代替わりし、 そして、西欧列強による東南アジア進出はいよいよ拍車がかかることとなった。 本書は、こうした当時のミャンマー(ビルマ)情勢を背景として、 日本人の漂流民と、アワド藩王国出身のセポイ(インド兵)を主人公にすえて、 血湧き肉躍る冒険活劇的に、小説として創りあげたものである。 4,290円 自由と解放を求める人びと 岩本裕子/西崎緑 共感し、葛藤する闘い――公民権運動の多面性! 多様に展開された公民権運動の側面を四人の女性の生き方から見る第一部、非黒人のカトリック教徒とユダヤ教徒、同性愛者が関係する運動との繋がり方を探った第二部、そして人種という「創られた」概念で差別化されたアメリカ社会の歩みを概観する第三部により構成される。 目次 はしがき 第一部 第一章 公民権運動の祖母たち──メアリ・C・テレルと ナニー・H・バロウズの場合……岩本裕子(浦和大学教授) 第二章 アトランタの黒人女性を動員した草の根公民権運動 ──ルビー・パークス・ブラックバーンの 有権者登録活動を通して…………西崎 緑(熊本学園大学教授) 第三章 「誰のための民主主義か」──ロスアンジェルスにおける 長い黒人自由闘争とシャーロッタ・バス……土屋和代(東京大学准教授) 第二部 第四章 カトリック教徒による人種平等を求める闘い ──マーガレット・ “ ペギー”・ローチを 事例として…………………………佐藤千登勢(筑波大学教授) 第五章 ユダヤ人の公民権運動への参加とホロコースト ──マリオン・イングラムを中心に……北 美幸(北九州市立大学教授) 第六章 警察暴力とマイノリティ間の連帯 ――ハリー・ヘイのゲイ・アクティビズムと黒人自由闘争、 1930 年代~1969 年………………………兼子 歩(明治大学専任講師) 第三部 第七章 「社会的構築物としての人種」概念に基づく通史的展望の意義 ──五つの設問を媒介に駆け足でアメリカ史を 概観する試み………………………………川島正樹(南山大学教授) あとがき 索引(人名+歴史事項) 2,640円 純粋の探究 ジャン・ジオノ/山本省 戦争は国家が企てる途方もない愚行である 求められるのは上官に対する屈辱的で盲目的な服従のみである 『服従の拒絶 Refus d'obeissance』(1937年) 『純粋の探究 Recherche de la Purete』(1939年) 『ドミニシ事件覚書 Note Sur L'Affaire Dominici』(1954年)を収載。 第一次大戦に参加したジオノは、今にも戦争が勃発しそうな不穏な空気を 読み解こうと、反戦の書『服従の拒絶』を、さらに宣戦が布告されると 『純粋の探究』を発表。 国家の意図によって国民がまきこまれる戦争の無意味さ、欺瞞的側面を あばきだそうと試みた。その後、政治には口出ししないと決めていた ジオノだったが、ガリマール社の依頼で、迷宮入り間近で、殺人現場の 近くに住む農民が犯人とされ死刑宣告された「ドミニシ事件(1952年)」 の裁判を傍聴。ジオノは彼が犯人だとはとても思えない。 そして『ドミニシ事件覚書』を判決直後に出版。 ジオノはこの裁判の問題は、被告の貧しいフランス語力にあるということと、 裁判長や陪審員たちの判断がいかに偏見と思いこみに基づいているか ということを豊富な実例を挙げて明解に指摘した。 この地方の農民の生活を知悉するジオノだからこそ、 書くことができた作品であった。 2,860円 人生斯くの如くか 永峯清成 著名な人の死は多くの場合、劇的であり、葬られた場所は 厳粛な処だ。 たとえその人物が、世に悪人だと言われたとしてもである。 その厳粛さに惹かれた著者が、 若い頃から訪ねた墓地に眠る人の生き様に思いを馳せ、 もし問いかけがあるならば、その答えを思索する異色の紀行書。 目 次 はじめに 〔日本の部〕 一 正成(まさしげ)の首塚 二 六波羅探題北条一族の墓 三 北条高時の墓 日野俊基の墓 護良(もりよし)親王の墓 四 菅原道真の墓 五 支倉常長の墓 六 渡辺崋山の墓 七 江藤新平の墓 八 西郷隆盛の墓 九 平民宰相 原敬の墓 〔ヨーロッパの部〕 一 カタコンベ 二 山賊ホセマリアの墓 三 「スペイン戦争」犠牲者の墓 四 カルメンと椿姫の墓 五 哲学者ニーチェの墓 六 ウィーンの中央墓地 ベートーヴェンの墓 七 ヒットラーの両親の墓 八 ナチス親衛隊員の墓 九 ユダヤ人墓地 1,870円 1 ... 161718 ... 21 TOP 電子書籍(本・小説) 彩流社 17ページ目