アメリカ社会の人種関係と記憶
あらすじ
アメリカ的な人種差別の構造と変遷を読み解き、歴史の再認識を問う!
18世紀末から今日までアメリカ社会で展開されてきた
人種関係史との対話。
先住の人びと、奴隷とされた人びと、移民として渡米した人びとなど、
異なる状況下で多種多様な人びとが紡ぎ出してきた
重層的アメリカ社会は、白人優位の人種差別が社会秩序として
刻まれてきた歴史をもつ。
その変遷を複雑な動態として個々人のレベルで捉えようと、
半世紀にわたって発表されてきた12の「作品」を収録。
今や人種差別問題は、「自分は何者か」「人とは何か」を問う
問題でもあり、その意味で本書は、歴史認識の変遷と歴史の問い直し
の現状を射程に入れつつ、
今を生きる私たちに「あなたは何をどう考えどう行動しますか」と
問いかける労作である。
〔主な目次〕
まえがき
◆第一部 奴隷制時代の自由黒人とアメリカ社会
第1章 フランス/ハイチ革命の記憶と自由黒人(1790年代~1830年代)
三 フランス革命の「悪しき」影響
四 自由黒人デンマークの蜂起計画(1822年)――ハイチ革命を目指して
五 移住問題と自由黒人――忘却されるハイチ共和国
おわりに――フランス/ハイチ革命の忘却 ほか
第2章 自由黒人デンマークの蜂起未遂事件とチャールストン
二 奴隷とされていた人びとチャールストン――裁判から見える状況
三 奴隷制を基盤とする社会秩序形成 ほか
◆第二部 ウィルミントン事件の諸相
序にかえて ウィルミントン事件を見る視座
第1章 再建期のせめぎあい――ウィルミントンでの白人優越主義
二 黒人市民の活動開始――連邦軍黒人中隊に助けられて
四 民主党支配確立へ ほか
第2章 「白い革命」(1898年)
一 1890年代のノースキャロライナ州――「白い革命」の背景と展望
四 「白い革命」の担い手 ほか
第3章 「白い革命」下の黒人市民
二 「白い革命」の衝撃
三 黒人市民の進路 ほか
◆第三部 黒人コミュニティの可能性――シカゴの事例
第1章 黒人銀行家ジェシー・ビンガと仲間たち
一 起業するジェシー・ビンガ――様々な人びととのつながり
二 銀行という媒体に集う人びと ほか
コラム ロズモンドさんにとってのビンガ
第2章 シカゴ黒人新聞『ディフェンダー』の子供たち
――ビリケン倶楽部の人種/国民意識(1921年~ 1942年)
一 「ディフェンダー・ジュニア」登場――人口増加、暴動、子供組織
二 ビリケン倶楽部の発展 ほか
◆第四部 歴史のなかの実態と虚像
第1章 白い肌の「黒人」――アレックス・マンリー
二 ウィルミントン事件のアレックス・マンリー
三 一〇〇年後のアレックス・マンリー再登場
五 アレックス・マンリーとは誰なのか ほか
第2章 1990年代の「文化戦争」――左翼ギトリンの思い
二 エリート文化をめぐる「文化戦争」──その多様な戦場
四 多文化主義をめぐる論争とギトリン ほか
第3章 20世紀アメリカにおける暴力の不可視化と秩序形成
――キング象徴化と「カラーブラインド」の遺産
第4章 21世紀に続く? カラーブラインド――チャペルヒルの事例
第5章 歴史の実態とマスター・ナラティヴ
――活動家ブルース・ハートフォードとの対話から