文藝春秋 6,379件 人気順 新着順 修羅の匂い 結城昌治 ブティックの女経営者の恋人が殺され、彼女の親友である人妻に疑いがかかる。殺人現場に残された人妻と同じ香水の香りの謎は? (「修羅の匂い」)。実直なサラリーマンが出来心で犯した浮気相手の若いホステスの部屋を訪れると、彼女は全裸で倒れていた。男にアリバイはない(「擦れ違った顔」)。一見、何不自由ない平和な家庭に隠された事情、場末の調査事務所に持ち込まれた五つの依頼は、やがて凄惨な事件へと発展する。著者持ち前の曖昧の美学が光る本格ハードボイルド連作短篇集。 660円 山岡鉄舟(一) 南條範夫 飛騨高山で郡代の若様としてのびやかな少年期を過した鉄太郎は早くも剣と書に天禀を現わす逸材だった。しかし、畏敬にすら近い愛で慕っていた母を突然うしない、幼い弟妹の面倒は小さな主の肩にのしかかることになる。初恋に破れ、父をまもなくみとり、17歳で江戸に出てからは、天下の千葉道場や浅利道場で猛稽古に明け暮れ、“鬼鉄”の異名をとる剣士に成長する。しかし、幕末怒濤の時代がやがてこの純朴無類の大男を歴史の渦の中に巻き込んでゆく。剣と書と女修行の青春篇。 770円 山岡鉄舟(二) 南條範夫 金もいらぬ、名もいらぬ、命もいらぬと言う男は、始末に困るものだ。この始末におえぬ男でなければ天下の大事はできぬ──と西郷隆盛が評した鉄舟・山岡鉄太郎。屋台骨の傾きを素知らぬふりして権勢にしがみつく幕府執政者たちと新生日本を夢みて荒ぶる下級武士や先鋭思想家たちとのあいだでひとり超然とおのれを貫く。朝敵徳川慶喜家来として敵陣をくぐり抜け、西郷と面談、江戸無血開城に功あった春風駘蕩たる傑物を柱に激動期を生きる人々を縦横に描く、幕臣の側からの明治維新論。 770円 山岡鉄舟(三) 南條範夫 前近代への郷愁にとらわれ、新政府へは恨みごとばかりの地方役人を相手に、山岡はあえて憎まれ役を引き受け、大胆な改革にのりだす。豪胆かつ温情あふれる人柄にやがて周囲の心は氷解、改革は着実に進み、いっそう山岡の名は高まるが、その彼に懇請されたつぎの仕事は天皇の御教訓掛であった。力自慢の青年天皇を相撲で投げ飛ばすなど、様々なエピソードを残した純真忠誠の硬骨漢は、天皇から名もなき市井の人にまで深く愛され、剣禅書の達人として爽やかな生涯をとげたのであった。 770円 さむらいの本懐 海音寺潮五郎 幕末の世に大仕事をしながら、将軍慶喜からも疎まれ罵倒された勝海舟、一介の流人あがりにもかかわらず東国武士に担ぎ上げられ鎌倉に幕府を開いた源頼朝などなど、人の褒貶は棺を蓋うてもなおなお定まらない。永い時の流れを経てみれば勝者も敗者もみなひとしく美しく懐しい。遺るのはただ、男の美学の存否のみ、その尺度で測られることこそが「さむらいの本懐」だろう。円熟の史眼で転変を凝視する巨匠の小説と随想集。歴史を読む醍醐味はこの一冊に凝集される。 660円 振られた刑事 結城昌治 惚れていたバーのホステスが殺された。生前、急に冷淡なそぶりにかわった彼女に、なにが起こっていたのか? 捜査陣からはずされた刑事が、ひとり真実を追う表題作のほか、不倫と殺人容疑の狭間でアリバイ工作を画策する家庭の皮肉な幕引きを描いた「喪服の仲」、清楚な女子大生の自殺をテーマに、日常に見え隠れする人間の闇をしずかに解き明かす「悪魔の明日」など、全九篇を収録。人間ドラマの悲喜劇にやさしい視線を注いだ、推理ミステリーの名手による魅惑の短編集。 660円 木綿恋い記(上) 水上 勉 万葉集にも歌われる別府の奥の由布岳の麓に生まれた娘に、砕石工夫だった父は由布(ゆう)と名付けた。その父は彼女が十歳のときダイナマイト事故であっけなく死に、病弱だった弟も幼くして世を去った。敗戦直後の貧しさから温泉旅館の芸者になった由布は、酔客に手込め同然に処女を奪われ、以後、客にからだを売るようになる。そんな由布を心配した母は、同郷のつてを頼って東京へ行きマッサージ師の勉強をするよう勧めた……。女性の生涯を描いて追随を許さない水上文学の白眉! 660円 木綿恋い記(下) 水上 勉 上京してマッサージ師の勉強を始めた由布(ゆう)は、勧める人あって繊維業者の愛川と所帯を持った。彼女の着ていた父の遺品の古セーターをヒントに大ヒットを飛ばした愛川は、会社が大きく成長するにつれ、田舎育ちの由布に満足しないようになる。離婚の代償に渡された金と家を元手に、温泉旅館時代の友だちの助けを借りて飲み屋を始めた由布には、思いもかけぬ事業の才能があったのだった……。一人の女性の運命を愛情こめて描き、時代をも鮮明に浮かびあがらせた傑作長篇。 660円 嗚呼 江戸城(上) 柴田錬三郎 天下を握った徳川家康には金がなく、一大名になり下った豊臣秀頼には巨額の金銀があった。貧しい天下人家康は、富有な大名を滅ぼしてその財宝を奪うべく兵を起す。大坂の役とは、それだけのことであった……。しかし三代将軍家光はその大金の埋蔵場所を知らされていなかった。ドラマはそこから始まる。将軍家から大名、旗本、はたまた浪人、商人、いかがわしい町奴に吉原の遊女までが縺れ合い、江戸城の建設と莫大な太閤の遺金をめぐって展開される雄大な長篇の幕開け。 770円 嗚呼 江戸城(中) 柴田錬三郎 太閤遺金の半分を所有する者は家光の弟・駿河大納言忠長であった。家光はその金を取り上げようと策し、落度もない弟に罪をきせ、配所に送る。無念の忠長は、金のありかをあかさずに自害。その秘密は忠長が思いを寄せた九条明子に遺され、そして家光は明子を強引に江戸城大奥へ連れ去ってしまった……。一方、太閤遺金を狙うものは将軍家だけではない。徳川顛覆の兵を挙げんとする豊臣浪人、その浪人群を率いて海外雄飛を計る由比正雪がそれであった。 770円 嗚呼 江戸城(下) 柴田錬三郎 由比正雪の海外雄飛の計画は着々と進んでいた。太閤遺金のありかをつきとめ、紀州頼宣が軍船を貸してくれることにもなったいま、家光がいつ亡き人となるか……。師石川丈山のいう、まさにその時こそ決行のチャンスと、正雪の胸は大きくふくらむ。対するは徳川に知恵伊豆ありと知られた松平伊豆守の老獪な策略。丸橋忠弥、幡随院長兵衛、大久保彦左衛門、一心太助、天草四郎、巨額な金銀をとりまきうごめく多種多彩な人物の迎えたクライマックスとは。 770円 鬼が来た(上) 棟方志功伝 長部日出雄 善知鳥(うとう)……それは青森市の古名でもあり、なぜか悪知鳥とも呼ばれて古今集にも歌われた悲しい伝説の鳥でもある。その幻の鳥を追って本州北端、青森の善知鳥神社に隣接する貧しい鍛冶屋から始まった棟方志功の旅は、柳宗悦と民芸運動、保田與重郎と日本浪曼派、太宰治らとの出会いと微妙な反発を経て、未知の闇へと進んで行く……。天才版画家・棟方志功の人とその時代を、郷里を同じくする作者が、深い愛情と渾身の力をこめて描いた伝記文学の傑作。芸術選奨文部大臣賞受賞。 770円 鬼が来た(下) 棟方志功伝 長部日出雄 「棟方志功の生涯は、遠い昔に滅び去ったはずの古代人の魂、すなわち文字の原義における鬼が、青森の貧しい鍛冶屋に生まれた小柄で筋骨型の毛むくじゃらな肉体をかりて忽然と姿をあらわし、前近代と背中合わせになっていた日本の近代のなかを風のように駆け抜けて行った一生のようにおもわれる」(あとがきより) ヴェニス・ビエンナーレのグラン・プリ受賞をピークとする長い全力疾走のはて、棟方志功が地平線の上に見たものは……。芸術の世界の広さと深さを描いて比類のない傑作。 770円 新常識主義のすすめ 渡部昇一 「常識」とは何だろうか。それは常人でも持っている識別力のことである――名作ポルノ小説を糸口に現代の狂気から逃れるための常識の復権を説く表題作はじめ、「古事記・宣長・小林秀雄」ではオカルトの系譜から宣長と小林秀雄を考察し、「漫画の時代」では漫画の持つ<途方もないエネルギー>を論じる。はたまたモーツァルトを語り、戦後教育の持つ「平等主義という矛盾」を鋭く衝く。平易な文章で読む者を新しい思考の世界にひきこむ名エッセイ集。 660円 タレントその世界 永六輔 「先代三津五郎ははやっている芸を絶対にみとめなかった。理由は『駄目になるから流行るんだ』」そのほか、「たくさん税金が払いたい」(三波春夫)、「私は天才です」(ジョン・レノン)、「私の神様はお嬢なんです」(加藤喜美枝)、「妻帯者は信用出来ない」(三国連太郎)……などなど、東西のタレントが次々に登場する。好評『芸人その世界』に続いて、永六輔が豊富な資料と貴重な聞書きで綴る芸人の世界の可笑しくも哀しい挿話と語録。 660円 新々ちょっといい話 戸板康二 好評シリーズ続編は、ちょっとひねって歳時記ふう、人国記ふうに。一月登場は勝海舟、エノケン、高峰秀子、四月の人物、三遊亭円生、清水次郎長、与謝野晶子。八月のエピソードは永井荷風、乃木希典夫妻。青森県が生んだ太宰治、寺山修司、沖縄県生まれの徳田球一、山之口貘、山梨県出身の小林一三、山本周五郎、石川県から泉鏡花、徳田秋声、室生犀星……。微苦笑から抱腹絶倒まで、最後の粋人が公開する人生の達人たちの秘話逸話大全集。どこから読んでも損するページはありません。 660円 千代の富士一代 石井代蔵 目がランランと輝くので渾名が「ウルフ」。体は小さいが足腰のバネは抜群で怪力の持ち主。東京見物という話につられて九重部屋に入門した貢少年は、骨折や脱臼のために番付を上ったり下ったりの苦難の連続だった。それでも、努力、精進のかいあって58代目横綱に昇進するが、デビュー場所でケガ……。不運を克服してついに稀代の名横綱千代の富士となるまでを、千代の山、北の富士という二人の師匠の生き様などもからめて描く相撲小説の傑作。 660円 八雲が殺した 赤江瀑 「ワイン・グラスの赤い液体に映った人間の影、肉体の悪魔--あの美しい酒が、わたしの体のなかで、いま悪魔の肉に変わりはじめている」小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の怪談物語「茶わんのなか」を題材に女性の魔性とエロスの世界を描く表題作(昭和59年第12回泉鏡花文学賞受賞作)ほか「葡萄果の藍暴き昼」「象の夜」「破魔弓と黒帯」「ジュラ紀の波」「艶刀忌」「春撃ちて」「フロリダの鰭」。多彩で絢爛たる異色作八篇を収録した。 660円 四畳半色の濡衣 野坂昭如 〈……方丈より一尺せまき九尺四方すなわち四畳半はいにしえより色のにぎわい。香りゆかしき閨のうち、いくよの夢は宝舟、立てし帆柱いとめでたきありさま、つたなき筆に写して、雨の振袖しっぽりと、濡色みするよしなしごと書きつづらんと、珍腐山人しるす……〉雑誌「面白半分」編集長として伝・永井荷風作の名作「四畳半襖下張」を再録し、刑法一七五条わいせつ文書販売人の判決を受けた著者が、憤然、筆のかぎりを尽くして男女の営みを活写し、わいせつとは何かを世に問う問題作。 550円 朝は死んでいた 梶山季之 新宿で知り合った行きずりの女は、二十九歳の銀行員東田に充実した一夜を与えてくれたが、翌朝、再度手を伸ばした女の体は、冷たく冷え切り、上着のポケットには分厚い札束が入れられていた……。いわれなき殺人罪に問われた東田を救い、特ダネをものにするために週刊誌記者、西岡の活躍がはじまる。姿なき殺人者を追って、東京から大阪へ神戸へ、記者たちは必死の取材網をひろげた。あと二日、あと一日、締切に追われながらついに追いつめた真犯人の姿は……。著者会心の長篇推理。 770円 1 ... 315316317 ... 319 TOP 電子書籍(本・小説) 文藝春秋 316ページ目