ジャン・ジオノ/山本省 9件 人気順 新着順 貧困と平和についての農民への手紙 ジャン・ジオノ/山本省 「戦争」に向かっている国家に歯止めをかけることができるのは農民しかいないとジオノは考えた。 ジオノは暮らしていたマノスクという町の周辺で暮らしている農民のことをよく知っていた。自分で判断して行動するようにと何度も念入りにジオノは注意している。あるラーメン屋が美味しいとマスコミが騒げば、たちまち自称「食通」たちが押しかけ長蛇の列を作る。高級と言われているブランド品をみんなが競ってあさる。大型娯楽商業施設に無数の人々が参集する。軽井沢や嵐山近辺が見どころだと観光業界が宣伝すると、すぐそれに乗せられる人々が後を絶たない。政府の高官が、さあ今こそ反撃を開始しようとタイミングよく声をかければ、まるで羊の群れのように人々は「さあ、戦争だ!」と叫ぶかもしれない。私たちは自分が旨いと思うものを食べ、自分の楽しみは自力で発見したいものだ。桜が美しいのは桜の名所だけではない。道端に枝ぶりのいい桜が咲いていたりするのである。ジオノが指摘しているように、「戦争」に反対することは大変な勇気を必要とする。政府やマスコミに簡単に操られることだけは何としても避けたい。どうしたらいいのか、ジオノの著作は貴重なヒントを与えてくれるはずである。 2,860円 憐憫の孤独 ジャン・ジオノ/山本省 『憐憫の孤独』は二十の中・短編で構成されている。物語もあればエッセイもある。 初期「牧神三部作」(『丘』『ボミューニュの男』『二番草』)のあとに書かれた作品で、ジオノ文学の重要な要素が見事に凝縮された内容豊かな傑作である。 これ以降に出版される多種多様な作品群を予告するような物語が多く含まれており、 ジオノ文学の扇の要にたとえられるような作品だといえよう。 1,650円 青い目のジャン ジャン・ジオノ/山本省 事実と虚構を交えて語られる『木を植えた男』の作者 ジャン・ジオノの驚くべき少年時代を描いた物語。 妄想的な少年ジャン、女性に対する過敏とまで表現できるような 感受性、父親への揺るぎない信頼、音楽への本能的な共鳴、 樹木や動物への限りない親愛の情。 ジオノ文学を豊かに深遠にまた普遍的なものにしていく 創造活動の揺籃期が雄弁に喚起されている。 2,860円 ボミューニュの男 ジャン・ジオノ/山本省 社会と隔絶した「ボミューニュ」の集落で 孤立して暮らす人びと…… 彼らの索漠とした生活は、平穏な暮らしへと変わって 行きうるものでもあった…… 本作は「牧神三部作(第1作『丘』、第3作『二番草』)」 の第2作である。 人びとは、主人公のハーモニカの演奏により 住人相互のコミュニケーションが取り戻され、 ふたたび人間らしい暮らしを楽しめるようになった。 人間社会の外にあるような世界の驚異を扱うのが 「牧神三部作」の特徴である。 主人公アルバンが奏でるハーモニカの限りなく雄弁な音楽に、 この世のものと思えない、それがあらわれている。 2,860円 本当の豊かさ ジャン・ジオノ/山本省 エコロジー文学の祖と形容しうるジオノの代表的作品。 エセー風『本当の豊かさ』(1937年:Les Vraies Richesses)は、 反戦(厭戦)的平和主義の激烈な作品『純粋の探求』 (Recherche de la Purete)と並ぶ名作である。 この作品にちなみ、ジオノが住んでいた家にいたる登り坂は 「本当の豊かさの坂道」(Montee des Vraies Richesseses)と 名付けられている。 2,860円 純粋の探究 ジャン・ジオノ/山本省 戦争は国家が企てる途方もない愚行である 求められるのは上官に対する屈辱的で盲目的な服従のみである 『服従の拒絶 Refus d'obeissance』(1937年) 『純粋の探究 Recherche de la Purete』(1939年) 『ドミニシ事件覚書 Note Sur L'Affaire Dominici』(1954年)を収載。 第一次大戦に参加したジオノは、今にも戦争が勃発しそうな不穏な空気を 読み解こうと、反戦の書『服従の拒絶』を、さらに宣戦が布告されると 『純粋の探究』を発表。 国家の意図によって国民がまきこまれる戦争の無意味さ、欺瞞的側面を あばきだそうと試みた。その後、政治には口出ししないと決めていた ジオノだったが、ガリマール社の依頼で、迷宮入り間近で、殺人現場の 近くに住む農民が犯人とされ死刑宣告された「ドミニシ事件(1952年)」 の裁判を傍聴。ジオノは彼が犯人だとはとても思えない。 そして『ドミニシ事件覚書』を判決直後に出版。 ジオノはこの裁判の問題は、被告の貧しいフランス語力にあるということと、 裁判長や陪審員たちの判断がいかに偏見と思いこみに基づいているか ということを豊富な実例を挙げて明解に指摘した。 この地方の農民の生活を知悉するジオノだからこそ、 書くことができた作品であった。 2,860円 大群 ジャン・ジオノ/山本省 ジオノによる唯一の反戦小説。 ヴァランソル高原を通過する羊の群れ。 羊の群れ(Troupeau)と兵士の群れ(Troupe)。 ジオノはフランス人の生活にとり、きわめて重要な「羊」の群れを 冒頭に登場させることによって、この作品に象徴的な意味を注ぎ込んでいる。 若者たちは戦争に出征していった。物語のなかで血なまぐさい 戦闘そのものが描写されることはない。 致命傷を負い瀕死の状態にある戦友を見守る兵士。 ドイツ軍が撃ってくる弾丸を塹壕のなかで避けている兵士。 妻からの手紙を読む兵士。死んだ赤ちゃんを齧っている豚に短刀を 突き刺し、豚と格闘する兵士。羊の群れのなかの もう動けなくなっていた子羊を預けていた老羊飼いがその子羊を 受け取りにアルルからやってくる。折しも赤ちゃんが生まれ、 ヴァランソル高原にも生命の兆しが感じられるようになっていく。 正義や平和のための戦争はありえない。戦争はいったん始まって しまうと、止められない。戦争は戦闘に参加する兵士たちだけでなく、 銃後を守る女や老人・子供にも悲惨さしかもたらさないことを、 この作品は雄弁に語っている。 2,860円 蛇座 ジャン・ジオノ/山本省 ジオノ最大の関心事であった、羊と羊飼いを扱う 『蛇座 Le serpent d'etoiles』、 そして彼が生まれ育った町について愛着をこめて書いた 『高原の町マノスク Manosque-des-Plateaux』を収める。 見習いの羊飼い、そして羊飼いたちを率いた親方。 羊飼いたちは年に一度、マルフガス高原に集まり、演劇のようなものを 上演する。海や山や河や風などに扮した羊飼いが壮大なドラマを演じる のである。題名『蛇座』は松明で煌々と照らされた広場で行われる夜を 上空から見守っている星座「美しくねじれた蛇座」から取られている。 モンドールの丘、デュランス河、ヴァランソル高原、アッス渓谷、 地元の人々…。ラルグ川で溺れそうになった娘との会話や村の公証人宅 での食事風景など、自然や人間についての描写がせまる。 その想像力を奔放に発揮したジオノが、空想の「マノスク」を語る のである。創作の準備倉庫とでも形容できる地元マノスクの内と外が 入念に紹介されるのが『高原の町マノスク』だ。 作家ジオノの懐をうかがうように読み進めることができる作品である。 2,860円 メルヴィルに挨拶するために ジャン・ジオノ/山本省 『白鯨』の仏語訳者ジオノによる評伝的小説 『メルヴィルに挨拶するために Pour saluer Melville』と 『逃亡者 Le Deserteur』の舞台は外国である。 『白鯨』の作者が生まれた米国という外国、『逃亡者』ではフランス人の主人公が スイスという外国へ亡命し、そこで画家としての生涯を過ごす物語である。 『メルヴィルに挨拶するために』は『白鯨』の仏語訳をリュシアン・ジャックとともに 完成したジオノが、その序文として書いた作品である。自著の出版交渉のために訪れたロンドンの出版社はメルヴィルの条件すべてを了承した。旅の道中、二週間、メルヴィルは行き当たりばったりに歩き回るのだか、途中、偶然にもアデリーナ・ホワイトという女性と出会い、両者は互いに相手に対し、不可思議とも形容できる精神的な友情を覚える。その精神感応に満ちた神秘的な時を過ごすも、またすぐに別れることとなったメルヴィルは『白鯨』を、彼女のために全身全霊を込めて書くのだった。しかしアデリーナがその作品を読むことはついになかったのである。 作品中の作家メルヴィルのなかに、人見知りの激しい人間でありながら、機が熟すると文学に没入するというジオノ自身の性格が投入されているのである。この作品はジオノの最高傑作の一つでもある。 『逃亡者』では、主人公の画家が、それまで所属していた社会から、経緯は一切不明ではあるものの逃亡することとなり、祖国フランスからも脱出しスイスに潜入することとなる。逃亡者としての主人公を、ある地方長官が保護することとなり、生活の場と食糧が提供される。主人公は絵の才能を持ち合わせていた。彼は長官の奥さんを描くことによって感謝の気持を表現するのだった。 小説家にしても画家にしても、芸術家は世俗の富や名声とはほぼ無関係であると考えていたジオノにして作り出されたであろう作品である。事実を単になぞることが体質的にできなかったジオノは、実在の芸術家の伝記を書こうとしても、自分自身の姿をほぼ必然に作家や芸術家に投入してしまうことになるのである。 2,860円 1 TOP 電子書籍(本・小説) ジャン・ジオノ/山本省