大群
ジャン・ジオノ/山本省 2,860円
あらすじ
ジオノによる唯一の反戦小説。
ヴァランソル高原を通過する羊の群れ。
羊の群れ(Troupeau)と兵士の群れ(Troupe)。
ジオノはフランス人の生活にとり、きわめて重要な「羊」の群れを
冒頭に登場させることによって、この作品に象徴的な意味を注ぎ込んでいる。
若者たちは戦争に出征していった。物語のなかで血なまぐさい
戦闘そのものが描写されることはない。
致命傷を負い瀕死の状態にある戦友を見守る兵士。
ドイツ軍が撃ってくる弾丸を塹壕のなかで避けている兵士。
妻からの手紙を読む兵士。死んだ赤ちゃんを齧っている豚に短刀を
突き刺し、豚と格闘する兵士。羊の群れのなかの
もう動けなくなっていた子羊を預けていた老羊飼いがその子羊を
受け取りにアルルからやってくる。折しも赤ちゃんが生まれ、
ヴァランソル高原にも生命の兆しが感じられるようになっていく。
正義や平和のための戦争はありえない。戦争はいったん始まって
しまうと、止められない。戦争は戦闘に参加する兵士たちだけでなく、
銃後を守る女や老人・子供にも悲惨さしかもたらさないことを、
この作品は雄弁に語っている。