壬生義士伝 新選組でいちばん強かった男
第一部~第四部
各話一覧
- 01:34:27第一部 遥かなる故郷あらすじをみる 戊辰戦争…官軍に追われ、敗走する幕府軍。雪の中を、血と泥にまみれた新選組の隊士が南部藩大坂蔵屋敷にたどりつく。「わしは、去る年脱藩いたしました吉村貫一郎と申す組付同心にてござんす、帰参ばお許し下んせ」応対に出たのは差配役の大野次郎右衛門。「久し振りだの、貫一」一瞬の交情、しかし次の瞬間大野はこう言い放つ「恥を知れ!腹ば切れ!」その夜、曲がった刀で腹を切り、ひとり死んでゆく吉村貫一郎。「盛岡さ帰りてえ、しづお前に会いてえ…!」このドラマは、故郷を愛し、家族を愛した新選組の無名隊士の物語である。時を遡った盛岡南部藩…貫一郎と大野は寺子屋で学ぶ幼馴染だった。青年となった2人の前に花のような美少女、しづが現れる。たちまちしづに夢中になるふたりだったが、本家の兄の死によって冷や飯食らいから4百石の組頭に出世した大野と百姓の娘では結婚が許されるはずはなかった。夏祭りの日、貫一郎はしづに求婚する。「嫁こさ来てくなんせ、畢生のお願いでござんす」涙で答えるしづ。祝言の夜、貫一郎はしづに2つの誓いをたてる。「文武に精進して、身をば立て、子にひもじい思いはさせぬ」「たとい病であれ戦であれ、幼子ば残して死ぬような無体はせぬ」この2つこそが、吉村貫一郎の「義」となるのであった。元治元年、南部盛岡は凶作にみまわれていた。藩校で学問と武術の助教を勤めるまでになっていた貫一郎だったが、身分はわずか二人扶持の足軽同心、さらに2人の子をなした吉村家には飢餓の恐怖がせまっていた。その頃、京都では新選組が、三条小橋、池田屋に参集した長州の志士達を強襲し、血祭りにあげていた。この池田屋事件によって新選組の名は天下に轟く。身分の差など一切なく、腕さえ立てばどんな素性の者でものし上がることができる義士集団の存在は南部でも聞こえていた。吉村の家では、母の千代が餓死する事態にまで貧窮は進んでいた。2人の孫に食べさせるため自ら食を断ったのだ。そしてしづの妊娠…貫一郎は大野に告げる。「今生の別れじゃ。尊皇攘夷の志ばもって、京に出る」「妻と子を食わせる為の、それがお前の選んだ道か」大野はあえて追わず、貫一郎はただひとり脱藩浪人として京に向かう。妻と子に脱藩者の家族という汚名を着せてしまったことを泣いて詫びながら。あらすじをみる 戊辰戦争…官軍に追われ、敗走する幕府軍。雪の中を、血と泥にまみれた新選組の隊士が南部藩大坂蔵屋敷にたどりつく。「わしは、去る年脱藩いたしました吉村貫一郎と申す組付同心にてござんす、帰参ばお許し下んせ」応対に出たのは差配役の大野次郎右衛門。「久し振りだの、貫一」一瞬の交情、しかし次の瞬間大野はこう言い放つ「恥を知れ!腹ば切れ!」その夜、曲がった刀で腹を切り、ひとり死んでゆく吉村貫一郎。「盛岡さ帰りてえ、しづお前に会いてえ…!」このドラマは、故郷を愛し、家族を愛した新選組の無名隊士の物語である。時を遡った盛岡南部藩…貫一郎と大野は寺子屋で学ぶ幼馴染だった。青年となった2人の前に花のような美少女、しづが現れる。たちまちしづに夢中になるふたりだったが、本家の兄の死によって冷や飯食らいから4百石の組頭に出世した大野と百姓の娘では結婚が許されるはずはなかった。夏祭りの日、貫一郎はしづに求婚する。「嫁こさ来てくなんせ、畢生のお願いでござんす」涙で答えるしづ。祝言の夜、貫一郎はしづに2つの誓いをたてる。「文武に精進して、身をば立て、子にひもじい思いはさせぬ」「たとい病であれ戦であれ、幼子ば残して死ぬような無体はせぬ」この2つこそが、吉村貫一郎の「義」となるのであった。元治元年、南部盛岡は凶作にみまわれていた。藩校で学問と武術の助教を勤めるまでになっていた貫一郎だったが、身分はわずか二人扶持の足軽同心、さらに2人の子をなした吉村家には飢餓の恐怖がせまっていた。その頃、京都では新選組が、三条小橋、池田屋に参集した長州の志士達を強襲し、血祭りにあげていた。この池田屋事件によって新選組の名は天下に轟く。身分の差など一切なく、腕さえ立てばどんな素性の者でものし上がることができる義士集団の存在は南部でも聞こえていた。吉村の家では、母の千代が餓死する事態にまで貧窮は進んでいた。2人の孫に食べさせるため自ら食を断ったのだ。そしてしづの妊娠…貫一郎は大野に告げる。「今生の別れじゃ。尊皇攘夷の志ばもって、京に出る」「妻と子を食わせる為の、それがお前の選んだ道か」大野はあえて追わず、貫一郎はただひとり脱藩浪人として京に向かう。妻と子に脱藩者の家族という汚名を着せてしまったことを泣いて詫びながら。
- 01:34:26第二部 京都雫石恋唄あらすじをみる 故郷を捨てて2ヶ月、京に着いた貫一郎にチャンスが訪れる。新選組、原田左之助の隊が浪人たちと切りあう現場に立ち会ったのである。「南部浪人、吉村貫一郎、新選組に助太刀ば致し申す!」獅子奮迅の活躍を見せた貫一郎を、原田は新選組局長近藤勇に引き合わせる。近藤の命令で神道無念流免許皆伝の永倉新八と剣を合わせた貫一郎は、土方歳三、沖田総司らの面前で永倉を圧倒、剣術師範方の地位を手に入れた。新選組での仕事は、想像を超えて凄まじいものであった。それでも貫一郎は、1人斬れば1両、戦闘に真っ先に飛び込んで5両という手当てを求めて浪人を斬りまくり、「人斬り貫一」「守銭奴」と呼ばれるようになった。すべては貫一郎の「義」のために。貫一郎はその給金のすべてを盛岡の家族に送った。大野の申しつけで盛岡との連絡役を買って出た大野家の中間、佐助に託して。個性派揃いの隊士のなかでも、貫一郎の存在は極めて異色のものだった。「南部盛岡は、日本一の美しき国でござんす。西に岩手山がそびえ、南には早池峰山…」酔えば必ず故郷自慢、家族自慢がはじまる貫一郎を激しく憎む者もいた。斎藤一である。ある夜、2人で歩いていた斎藤はいきなり貫一郎に切りかかる。「田舎者は好かぬ」死に場所を求めて新選組に入った斎藤のような男には貫一郎の「義」は理解できるものではなかった。そんな斎藤に貫一郎は答える。「わしは死にたぐねえ。死にたぐねえから人を斬ります」新選組はまた、近藤を中心とする血の掟にしばられた集団でもあった。裏切り、脱走はもとより、少しの失敗でも「士道不覚悟」との理由で粛清が行われた。昨日までの仲間の首を斬る、隊士の誰もがやりたがらない仕事も貫一郎は受けた。家族を養う道を拓いてくれた新選組に逆らうことは彼の「義」が許さなかった。しかし、その手当てを受け取るたびに、貫一郎の目には悲しみが宿っていった。ある日、貫一郎に縁談が持ち上がる。相手は新選組の理解者、八木源之丞のもとに身を寄せる娘、みよ。家族と離縁すれば、長男嘉一郎も脱藩者の息子という汚名を晴らせるだろうという近藤の勧めに貫一郎は大いに悩むが、最後にはみよにこう告げる。「おもさげなござんす。わしは、世の中がおさまったなら、盛岡に帰りてえと思っておりあんす。妻と、子供らと、精いっぺえのうめえ米ば作りてえのす。そのことだけが、貫一郎のたった1つの望みなのすお許しえって下んせ」慶応2年…天下は大きく変わろうとしていた。仇敵と思われていた薩摩と長州が手を結んだのだ。幕府の、ひいては新選組の脅威となる同盟を仕組んだ男、それが土佐の脱藩浪人坂本龍馬である。貫一郎と龍馬、この2人は後に運命的な出会いを迎えることになる。あらすじをみる 故郷を捨てて2ヶ月、京に着いた貫一郎にチャンスが訪れる。新選組、原田左之助の隊が浪人たちと切りあう現場に立ち会ったのである。「南部浪人、吉村貫一郎、新選組に助太刀ば致し申す!」獅子奮迅の活躍を見せた貫一郎を、原田は新選組局長近藤勇に引き合わせる。近藤の命令で神道無念流免許皆伝の永倉新八と剣を合わせた貫一郎は、土方歳三、沖田総司らの面前で永倉を圧倒、剣術師範方の地位を手に入れた。新選組での仕事は、想像を超えて凄まじいものであった。それでも貫一郎は、1人斬れば1両、戦闘に真っ先に飛び込んで5両という手当てを求めて浪人を斬りまくり、「人斬り貫一」「守銭奴」と呼ばれるようになった。すべては貫一郎の「義」のために。貫一郎はその給金のすべてを盛岡の家族に送った。大野の申しつけで盛岡との連絡役を買って出た大野家の中間、佐助に託して。個性派揃いの隊士のなかでも、貫一郎の存在は極めて異色のものだった。「南部盛岡は、日本一の美しき国でござんす。西に岩手山がそびえ、南には早池峰山…」酔えば必ず故郷自慢、家族自慢がはじまる貫一郎を激しく憎む者もいた。斎藤一である。ある夜、2人で歩いていた斎藤はいきなり貫一郎に切りかかる。「田舎者は好かぬ」死に場所を求めて新選組に入った斎藤のような男には貫一郎の「義」は理解できるものではなかった。そんな斎藤に貫一郎は答える。「わしは死にたぐねえ。死にたぐねえから人を斬ります」新選組はまた、近藤を中心とする血の掟にしばられた集団でもあった。裏切り、脱走はもとより、少しの失敗でも「士道不覚悟」との理由で粛清が行われた。昨日までの仲間の首を斬る、隊士の誰もがやりたがらない仕事も貫一郎は受けた。家族を養う道を拓いてくれた新選組に逆らうことは彼の「義」が許さなかった。しかし、その手当てを受け取るたびに、貫一郎の目には悲しみが宿っていった。ある日、貫一郎に縁談が持ち上がる。相手は新選組の理解者、八木源之丞のもとに身を寄せる娘、みよ。家族と離縁すれば、長男嘉一郎も脱藩者の息子という汚名を晴らせるだろうという近藤の勧めに貫一郎は大いに悩むが、最後にはみよにこう告げる。「おもさげなござんす。わしは、世の中がおさまったなら、盛岡に帰りてえと思っておりあんす。妻と、子供らと、精いっぺえのうめえ米ば作りてえのす。そのことだけが、貫一郎のたった1つの望みなのすお許しえって下んせ」慶応2年…天下は大きく変わろうとしていた。仇敵と思われていた薩摩と長州が手を結んだのだ。幕府の、ひいては新選組の脅威となる同盟を仕組んだ男、それが土佐の脱藩浪人坂本龍馬である。貫一郎と龍馬、この2人は後に運命的な出会いを迎えることになる。
- 02:30:16第三部 龍馬暗殺あらすじをみる 新選組の名声が高まるにつれて、局長の近藤は結成以来の生え抜きの同志より、論客の伊東甲子太郎などを重んじるようになっていた。なかでも高い身分出身の谷三十郎については、その弟の周平を養子にするほどで、これが鉄の結束を誇った新選組に軋轢を生じさせることになる。谷は、自分の刀を新調したいという私欲だけで隊の金を盗み、若い会計方の河合に罪をかぶせる。調役監察となっていた貫一郎は河合を助けるために手を尽くすが、近藤が妾を囲うために急に大金が必要になったことも重なって、河合は切腹を免れなくなる。このことに不満を持った斎藤たち隊士は、剣に心得のない谷に河合の介錯をするよう仕向ける。斎藤たちの思惑通り、谷は介錯で醜態を晒す。土方は谷の切腹を近藤に進言するが、近藤は谷の肩書きを理由に受け付けない。「近藤さん、あんたは一体、何を目論んでいる」「俺は新選組を、ただ人を斬るだけの集団で終わらせたくねえ」近藤の目的は、自分たちがもっと高い身分になることだった。こうして谷にお咎めはなく、隊士たちの不満は頂点に達した。遂には沖田、斎藤が謀り、谷を暗殺してしまう。死体を見た貫一郎は斎藤の太刀筋と見抜き、斎藤を告発しようとする。その足元に金を放る斎藤。「口止め料だ」色をなす貫一郎に、斎藤はさらに「どうした吉村。おぬしは女房子供のためなら、どんな汚い金でも拾うのでなかったのか」貫一郎は崩れるように膝をついて金を拾う。「仰せの通りこれが吉村貫一郎の誠でござる。よくぞ思い出させてくださいました」貫一郎が隊士募集のため江戸に発つことになった。それを聞きつけた佐助はこの機会にしづを貫一郎に会わせようと、しづを説得する。「いま会わねがったら、次の機会はもう来ねえかもしれねえのす」しづと佐助は江戸に夜を徹して向かった。再会の夜、しづは貫一郎に祝言の日に交わした誓いを確認する。「その2つのこと、天地神明に誓いまするか」「誓いまする。貫一郎はしづのために、決して命ば落とさぬと」2人は固く抱き合う。徳川びいきの孝明天皇が崩御し、幕府側の劣勢がいよいよ明らかになると、新選組も内部崩壊を始めた。伊東甲子太郎が数人の隊士をつれて脱退を申し出たのである。その中には貫一郎の生き方に最も理解を示してくれた服部武雄もおり、貫一郎も誘われる。だが、「人はどうあれ、拙者には近藤、土方両先生に恩義がござる。このご両所のお取立てなくば国元の女房子供は飢え死にしていたやもしれぬのです」こうして、貫一郎と服部は敵味方となってしまう。遂に大政奉還の号令が発せられた。立役者はまたしても坂本龍馬であった。京の街で龍馬と遭遇した貫一郎は、彼を捕まえようとするが、たちまち龍馬の弁舌に圧倒されてしまう「今大切なのは、強力な行政府の元に万民がよろしく団結して、新しい国を創る、そのことよ」「ゆくゆくは武士町人の隔てなく、能力のあるものが議員に選ばれる、そういう方向に持っていくつもりじゃ」貫一郎は龍馬のなかに自分が理想とする世の中を見た。伊東一派はいまや薩長に組していた。薩長の狙いが平和解決でなく、あくまで武力による倒幕と知った伊東は、龍馬を斬り、その罪を新選組に負わせることを画策した。こうして慶応3年11月15日、龍馬は暗殺された。貫一郎は、暗殺の状況から犯人が斎藤であることを知る。しかし斎藤は、近藤の密命を受けて伊東一派に潜入していた間者だった。結局龍馬を斬ったのは新選組。貫一郎は悄然となった。これを機に近藤は伊東を暗殺、一派の殲滅をはかる。油小路で元の新選組同士が斬りあい、貫一郎はおのれの一番の理解者、服部の体に刃を突き刺す…あらすじをみる 新選組の名声が高まるにつれて、局長の近藤は結成以来の生え抜きの同志より、論客の伊東甲子太郎などを重んじるようになっていた。なかでも高い身分出身の谷三十郎については、その弟の周平を養子にするほどで、これが鉄の結束を誇った新選組に軋轢を生じさせることになる。谷は、自分の刀を新調したいという私欲だけで隊の金を盗み、若い会計方の河合に罪をかぶせる。調役監察となっていた貫一郎は河合を助けるために手を尽くすが、近藤が妾を囲うために急に大金が必要になったことも重なって、河合は切腹を免れなくなる。このことに不満を持った斎藤たち隊士は、剣に心得のない谷に河合の介錯をするよう仕向ける。斎藤たちの思惑通り、谷は介錯で醜態を晒す。土方は谷の切腹を近藤に進言するが、近藤は谷の肩書きを理由に受け付けない。「近藤さん、あんたは一体、何を目論んでいる」「俺は新選組を、ただ人を斬るだけの集団で終わらせたくねえ」近藤の目的は、自分たちがもっと高い身分になることだった。こうして谷にお咎めはなく、隊士たちの不満は頂点に達した。遂には沖田、斎藤が謀り、谷を暗殺してしまう。死体を見た貫一郎は斎藤の太刀筋と見抜き、斎藤を告発しようとする。その足元に金を放る斎藤。「口止め料だ」色をなす貫一郎に、斎藤はさらに「どうした吉村。おぬしは女房子供のためなら、どんな汚い金でも拾うのでなかったのか」貫一郎は崩れるように膝をついて金を拾う。「仰せの通りこれが吉村貫一郎の誠でござる。よくぞ思い出させてくださいました」貫一郎が隊士募集のため江戸に発つことになった。それを聞きつけた佐助はこの機会にしづを貫一郎に会わせようと、しづを説得する。「いま会わねがったら、次の機会はもう来ねえかもしれねえのす」しづと佐助は江戸に夜を徹して向かった。再会の夜、しづは貫一郎に祝言の日に交わした誓いを確認する。「その2つのこと、天地神明に誓いまするか」「誓いまする。貫一郎はしづのために、決して命ば落とさぬと」2人は固く抱き合う。徳川びいきの孝明天皇が崩御し、幕府側の劣勢がいよいよ明らかになると、新選組も内部崩壊を始めた。伊東甲子太郎が数人の隊士をつれて脱退を申し出たのである。その中には貫一郎の生き方に最も理解を示してくれた服部武雄もおり、貫一郎も誘われる。だが、「人はどうあれ、拙者には近藤、土方両先生に恩義がござる。このご両所のお取立てなくば国元の女房子供は飢え死にしていたやもしれぬのです」こうして、貫一郎と服部は敵味方となってしまう。遂に大政奉還の号令が発せられた。立役者はまたしても坂本龍馬であった。京の街で龍馬と遭遇した貫一郎は、彼を捕まえようとするが、たちまち龍馬の弁舌に圧倒されてしまう「今大切なのは、強力な行政府の元に万民がよろしく団結して、新しい国を創る、そのことよ」「ゆくゆくは武士町人の隔てなく、能力のあるものが議員に選ばれる、そういう方向に持っていくつもりじゃ」貫一郎は龍馬のなかに自分が理想とする世の中を見た。伊東一派はいまや薩長に組していた。薩長の狙いが平和解決でなく、あくまで武力による倒幕と知った伊東は、龍馬を斬り、その罪を新選組に負わせることを画策した。こうして慶応3年11月15日、龍馬は暗殺された。貫一郎は、暗殺の状況から犯人が斎藤であることを知る。しかし斎藤は、近藤の密命を受けて伊東一派に潜入していた間者だった。結局龍馬を斬ったのは新選組。貫一郎は悄然となった。これを機に近藤は伊東を暗殺、一派の殲滅をはかる。油小路で元の新選組同士が斬りあい、貫一郎はおのれの一番の理解者、服部の体に刃を突き刺す…
- 02:37:22第四部 鳥羽伏見から五稜郭へあらすじをみる 新薩長の思惑通り、倒幕の空気はますます盛り上がり、京の町で新選組の威光は落ちていった。さらに王政復古の大号令。そんななか、沖田が病に倒れる。しみじみ語り合う貫一郎と沖田。「僕はどうなってもかまいませんが、吉村先生、あなたは考えなさいよ」「え?」「大事な家族がいるじゃありませんか…南部盛岡は美しき国でござんす、西に岩手山がそびえ、南には早池峰山、でしたっけ」「大好きだったんですよ。そんなあなたが。勇さんも、歳さんもそうなんです」たまらなくなる貫一郎「新選組のおかげで、わしも存分に仕送りが…妻も子も、飢え死にばせずにすみ申した…なんもかんも、新選組のおかげで…!」殺戮を繰り返してきた新選組は、幕府側からも疎まれる存在になっていった。京の町を追われるように大坂に向かう途中、近藤が鉄砲で撃たれ、新選組は土方が統率することとなった。そして慶応4年正月3日、鳥羽伏見の戦いが始まる。鳥羽伏見で惨敗した幕府軍は薩長軍にひるがえる錦の御旗を見てさらに衝撃を受ける。しかし、貫一郎はひとり官軍に立ち向かう。「天皇様に弓引くつもりはござらねども、拙者は義のために戦ばせねばなり申さん」無数の銃弾と刀傷を受けて血だるまになった貫一郎に隊士が駆け寄る。「逃げろ!吉村」「でき申さん…南部の侍は、義に背くような真似は致し申さん」そんな貫一郎を殴りつけたのは斎藤だった。「女房やガキや、南部の話ばかりする貴様が、俺は大嫌いだったんだ!それを今更なんだ!押し通せ!」「おもさげながんす…!」走り去る貫一郎の背に斎藤が叫ぶ「吉村、死ぬな!」盛岡南部藩大坂蔵屋敷…倒幕か佐幕か旗色を決めかねていた南部藩にとって、新選組の脱走兵をかくまうことは、藩の運命をも左右しかねないことである。差配役の大野としては貫一郎に切腹を命じることが、出来る事のすべてだった。その夜、大野は不器用な手で握り飯を作り、佐助に持っていくよう命じる。「これは、南部の米でやんすなあ」貫一郎は顔をくしゃくしゃにして泣いた。腹を切り、虫の息となった貫一郎の目の前に、しづの幻影が現れる。「長い間、本当に、本当にご苦労さんでござりあした…どうか、お心おきなく、あの世を行って下んせ」「しづ、有り難えことじゃ…」血の海の中の貫一郎を見て、大野の中でなにかが切れる…「貫一!死ぬな。わしを1人にしねでけろ。お前がいねえと、生きていけねのじゃ」遺髪を持って盛岡を訪ねた佐助を、しづは静かに迎える。「夢ば、見たのす。夢の中で、あの人はお別れば言うてくれましたですから、佐助さんが来ることは、何日も前から判っておりました」南部藩の評定で、大野はふっきれたように宣言する。「薩長討つべし。それより他に、南部武士たる一分の立つ道はない」官軍におしまくられる南部軍の陣を貫一郎の長男、嘉一郎が訪れる。大野は嘉一郎に告げる「わしを討て」と。「わしは、お前の父に腹ば切らせた。仇討ちは子の務めじゃ」嘉一郎はきっぱりと「父の罪ば償えぬ子が、父の仇ば討つわけにはいかねがんす…ごめん下せ」言い放ち、走り去っていく。こうして、大野は一級の戦犯として捕らえられ、貫一郎の家族の行く末を息子の千秋に託したうえで、斬首された。嘉一郎は、土方が最後の戦場として選んだ函館にいた。父の生き方を聞いた嘉一郎ははらはらと涙を流す。「土方様、吉村嘉一郎は天下に向かって、父の恥を雪ぎてえのす」嘉一郎は南部の旗を掲げて官軍に突進していった…大正5年…帝大の農学教授を退官した貫一郎の次男、2代目貫一郎は初めて盛岡の地に降り立つ。そこには彼が開発した冷害に強い品種「吉村早稲」の稲穂の海が待っていた。その中を1人の侍が急ぎ足に来る。吉村貫一郎が妻子のもとへ帰ってきたのだ。家の前では、しづが幼な子を連れて待っている。吉村は走る。走る。吉村の顔は輝いている。あらすじをみる 新薩長の思惑通り、倒幕の空気はますます盛り上がり、京の町で新選組の威光は落ちていった。さらに王政復古の大号令。そんななか、沖田が病に倒れる。しみじみ語り合う貫一郎と沖田。「僕はどうなってもかまいませんが、吉村先生、あなたは考えなさいよ」「え?」「大事な家族がいるじゃありませんか…南部盛岡は美しき国でござんす、西に岩手山がそびえ、南には早池峰山、でしたっけ」「大好きだったんですよ。そんなあなたが。勇さんも、歳さんもそうなんです」たまらなくなる貫一郎「新選組のおかげで、わしも存分に仕送りが…妻も子も、飢え死にばせずにすみ申した…なんもかんも、新選組のおかげで…!」殺戮を繰り返してきた新選組は、幕府側からも疎まれる存在になっていった。京の町を追われるように大坂に向かう途中、近藤が鉄砲で撃たれ、新選組は土方が統率することとなった。そして慶応4年正月3日、鳥羽伏見の戦いが始まる。鳥羽伏見で惨敗した幕府軍は薩長軍にひるがえる錦の御旗を見てさらに衝撃を受ける。しかし、貫一郎はひとり官軍に立ち向かう。「天皇様に弓引くつもりはござらねども、拙者は義のために戦ばせねばなり申さん」無数の銃弾と刀傷を受けて血だるまになった貫一郎に隊士が駆け寄る。「逃げろ!吉村」「でき申さん…南部の侍は、義に背くような真似は致し申さん」そんな貫一郎を殴りつけたのは斎藤だった。「女房やガキや、南部の話ばかりする貴様が、俺は大嫌いだったんだ!それを今更なんだ!押し通せ!」「おもさげながんす…!」走り去る貫一郎の背に斎藤が叫ぶ「吉村、死ぬな!」盛岡南部藩大坂蔵屋敷…倒幕か佐幕か旗色を決めかねていた南部藩にとって、新選組の脱走兵をかくまうことは、藩の運命をも左右しかねないことである。差配役の大野としては貫一郎に切腹を命じることが、出来る事のすべてだった。その夜、大野は不器用な手で握り飯を作り、佐助に持っていくよう命じる。「これは、南部の米でやんすなあ」貫一郎は顔をくしゃくしゃにして泣いた。腹を切り、虫の息となった貫一郎の目の前に、しづの幻影が現れる。「長い間、本当に、本当にご苦労さんでござりあした…どうか、お心おきなく、あの世を行って下んせ」「しづ、有り難えことじゃ…」血の海の中の貫一郎を見て、大野の中でなにかが切れる…「貫一!死ぬな。わしを1人にしねでけろ。お前がいねえと、生きていけねのじゃ」遺髪を持って盛岡を訪ねた佐助を、しづは静かに迎える。「夢ば、見たのす。夢の中で、あの人はお別れば言うてくれましたですから、佐助さんが来ることは、何日も前から判っておりました」南部藩の評定で、大野はふっきれたように宣言する。「薩長討つべし。それより他に、南部武士たる一分の立つ道はない」官軍におしまくられる南部軍の陣を貫一郎の長男、嘉一郎が訪れる。大野は嘉一郎に告げる「わしを討て」と。「わしは、お前の父に腹ば切らせた。仇討ちは子の務めじゃ」嘉一郎はきっぱりと「父の罪ば償えぬ子が、父の仇ば討つわけにはいかねがんす…ごめん下せ」言い放ち、走り去っていく。こうして、大野は一級の戦犯として捕らえられ、貫一郎の家族の行く末を息子の千秋に託したうえで、斬首された。嘉一郎は、土方が最後の戦場として選んだ函館にいた。父の生き方を聞いた嘉一郎ははらはらと涙を流す。「土方様、吉村嘉一郎は天下に向かって、父の恥を雪ぎてえのす」嘉一郎は南部の旗を掲げて官軍に突進していった…大正5年…帝大の農学教授を退官した貫一郎の次男、2代目貫一郎は初めて盛岡の地に降り立つ。そこには彼が開発した冷害に強い品種「吉村早稲」の稲穂の海が待っていた。その中を1人の侍が急ぎ足に来る。吉村貫一郎が妻子のもとへ帰ってきたのだ。家の前では、しづが幼な子を連れて待っている。吉村は走る。走る。吉村の顔は輝いている。
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