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掌の小説は、きわめて短い短編小説を集めた作品集です。小説ではありますが、わずか数ページで読めてしまう短編がたくさん収録されているので、どこからでも気軽に読みすすめることができ、いつでもすぐに読み終えることができます。いずれも詩的な世界観で描かれていて、短いからあまり深みはないだろうと思われがちですが、なかなかどうして、読み終わった後に鮮烈な印象を残す作品ぞろいの珠玉の作品集となっています。たびたび映画化されている伊豆の踊り子や雪国、古都などもたしかに素晴らしい作品ですが、それに負けずおとらずの静謐さ、宝石のような輝きを奥に秘めたのがこの掌の小説だと思います。私個人のおすすめはそこはかとなく色っぽい、「バッタと鈴虫」「眠り癖」です。
2015/05/14