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  • 泉鏡花文学賞や吉川英治文学賞などの文学賞や日本SF大賞を受賞するなど、多様なジャンルで一線級の活躍をされている夢枕獏先生の代表作の一つがこの『陰陽師』シリーズ。映画や漫画、2度にわたってのテレビドラマ化などその魅力から複数のメディアで展開されるほどの人気作です。読んでみると、映像作品や漫画では表現しきれない小説ならではの魅力が感じられます。その魅力を生んでいるのが作中のあえて多くを描写しない淡々とした文章です。主人公の陰陽師、安倍晴明と相棒の武士、源博雅の掛け合いをあえて淡々とした会話で表現することで、親友の間の多くを語る必要のない空気というものが感じられて気持ちがよいです。また、冗長さを削ぎ落すことで話も非常にテンポがよく展開され、しんみりとした空気も張りつめた緊張感も過不足なく表現されています。登場人物もみな魅力的ですが、何より魅力的なのが相棒役の源博雅です。貴族で武人の博雅は霊的な能力はないのですが、とても純朴で素直で飾らない人柄です。淡々とした掛け合いの中にも彼の人柄の良さがにじみ出ており、浮世離れしたところのある晴明を浮世に繋ぎ止めているのもこの博雅という人物なのでしょう。

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    aplpalpaさん
    2016/04/02