「黒人」は存在しない。 アイデンティティの釘付けについて
タニア・ド・モンテーニュ 著/堀茂樹 訳 2,640円
あらすじ
「『白人』の音楽が大好き」「『男流』文学がいいよね」
とは誰も言わないけれど、
「黒人文化は素晴らしい!黒人音楽が好き!」と人は言う。
いったい「黒人」とは、何を指すのか?
「黒人」「白人」はたまた「アジア人」「ユダヤ人」と分離して人数を数え、
極右からリベラルまでが陥るアイデンティティ至上主義の問題点を、
公民権運動の歴史から消された黒人少女の伝記、
そして現代黒人女性のリアルな日常から浮かび上がらせる。
シモーヌ・ヴェイユ文学賞受賞のユニークな反レイシズム・エッセイ集!
最近のこと、「まあ、あなたは運がいいですね」と、
白い肌の若い女性がため息をつきながらわたしに言った。
「少なくとも、あなたには『出自(オリジン)』があるじゃないですか!」
なぜあなたは自分にそれがないと思っているのですかと尋ねると、
彼女はこう答えた。
「え! だって、わたしは白人ですから」
(本文より)