国フェスの社会言語学――多言語公共空間の談話と相互作用

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あらすじ

国名をテーマにしたフェスティバル「国フェス」。
国際交流・理解を謳い、期間限定でそこに持ち込まれる多種多様なモノ・コト・価値の数々。それらの談話――言語・非言語を含む、有意味な記号活動のすべて――を、マルチモーダル談話分析、言語景観研究、地理記号論の三つの視点を基盤に複数の手法で精査し、複雑に展開される相互作用を紐解いていく。
国フェス研究が、在日外国人コミュニティとホスト社会を架橋する可能性に向けて―――。

【目次】


第1章 国フェスの社会言語学的研究――意義と方法
1. はじめに
2. 国フェス研究の意義
3. 国フェスの社会言語学的研究の意義
4. 研究の方法
5.本書の事例研究の位置づけ
第2章 調査の手順と国フェス事例の概要――開催の趣旨と経緯
1. はじめに
2. 調査の手順
3. 国フェスの概要
4. 国フェスの傾向と特徴
5. 本章のまとめ
第3章 国フェスのチラシのマルチモーダル談話分析――A4紙一枚に凝集される国フェス
1. はじめに
2. チラシの社会的機能と談話
3. チラシの横断的なMDA
4. チラシの多言語使用についてのMDA
5. チラシに凝集される国フェスの談話
6. 本章のまとめ
第4章 国フェス会場に展開される国名・地名――想像の国家空間
1. はじめに
2. 国名
3. 都市名
4. 当該国の地名と日本の地名:ベトナムフェスティバルを事例に
5. 本章のまとめ
第5章 トークショーでの二言語使用――通訳が介在する相互作用
1. はじめに
2. 事例概要
3. トークショーの相互作用分析
4. 通訳が欠落する契機と共起すること
5. 本章のまとめ
第6章 参加型の言語関連活動――文化資本としての当該国言語
1. はじめに
2. 出店エリアの言語関連活動
3. 参加型の言語関連活動の事例
4. 文化資本としての当該国言語の可能性
5. 本章のまとめ
第7章 音楽ライブでの多言語使用――多言語シンガーと観客の相互作用
1. はじめに
2. 事例概要
3. 楽曲間トークの談話分析
4. 多言語シンガーの談話戦略と台湾原住民言語の位置づけ
5. 本章のまとめ
第8章 感染症対策を講じた国フェスから見えること――「新しい日常」における国際交流イベントの課題と展望
1. はじめに
2. コロナ禍のイベント開催方針と代々木公園の国フェス
3. 「新しい日常」のベトナムフェスティバル 2020
4. 実地調査から見える人々の相互作用
5. 本章のまとめ
第9章 結論――多様性が価値づけられる多言語公共空間形成過程への示唆
1. はじめに
2. 各章の結果と考察
3. 国フェスの談話:移住者コミュニティと多様性の価値づけの観点から
4. 国フェス研究の課題と展望:方法論の観点から
コラム
「私が国フェスに惹きつけられる瞬間:インド人フォークアーティストの所作」
「公式ホームページの多言語設定:複数言語による情報伝達と各言語の存在感」
「少数民族語の存在:ミャンマー祭りに見るシャン語・シャン民族の顕在性」
「総合司会者の役割:演目紹介、時間調整、会場案内、通訳、そして危機管理」
「実行委員会における当該国出身者の活躍:異文化間コミュニケーターの視点」
「ボランティアに期待される言語能力:当該国言語の使用域を広げる可能性」
「ある老舗エスニックレストラン店主にとっての国フェス:距離感と解放感」
「コロナ禍に思う、越境する音楽の力:韓国打楽器奏者、李昌燮さんの祈り」
「コロナ禍のベトナムフェスティバル:つながりを絶やさない留学生達の輪」
あとがき
引用文献