歴史民俗学資料叢書 第三期 II 病いと癒しの民俗学
あらすじ
疾病・狂気が排除され、死が隠蔽された日常とは、〈癒し〉が忘れられた世界にほかならない。近代日本における〈医の歴史〉を歴史民俗学によって解読する。かつての日本では、肺結核・梅毒・風土病などの〈死に至る病い〉は、まさしく日常生活の一部であった。日本住血吸虫から回虫・蟯虫まで、ほとんどの日本人は寄生虫をその体内で養っていた。今日、疾病や狂気が世俗から排除され、死もまた日常生活から隠蔽されている。しかしそうした悩みなき日常とは、すなわち〈癒し〉が忘れられ、〈癒し〉への回路が絶たれた世界とも言える。〈病い〉こそが〈癒し〉なのは、徴兵忌避者に限らない。癒しが日常の世界から消失した今日、近代日本における〈医の世界〉の歴史を歴史民俗学の手法で解読しながら、病いという苦悩を癒しと安穏の世界へと導き転換しようとする民衆の心意を照射する。人面瘡と人面犬(田中香涯)、糞談議抄(小泉丹)他20文献を収録した資料集! 好評「歴史民俗学資料叢書第3期」の第2巻刊行!
【目次】
■解説篇
風土病の悲劇と徴兵制の重圧/桂田富士郎と「姫」というネコ/三神三郎と日本住血吸虫発見の碑/ミヤイリガイかカタヤマガイか/「糞便を水の中に入れるな」/日本住血吸虫病の「根絶」/ミヤイリガイの根絶と環境破壊/徴兵よけとしての風土病/弾丸よけ信仰と国防婦人会
■資料篇
凡例
1 虎列刺豫防諭解(一八八〇年) 内務省社寺局・衛生局
2 徳川家康の身体に就いて(一九〇七年) 富士川游
3 疾病(一九一三年) 楢木末實
4 朝鮮に於ける特種の犯罪(一九一五年) 中野有光
5 一狂者の追想録(一九三六年) 某氏
6 社会的に必要なる病者(一九二〇年) 田中香涯
7 寄生虫病及地方病予防抄(一九二一年) 宮入慶之助
8 痘瘡と赤色(一九二三年) 田中香涯
9 眼病と呪療法(一九二七年) 鹿児島茂
10 奉納物(一九二八年) 富士川游
11 アイヌ雑談(一九三〇年) 原田雄吉
12 目をとがめる神さま(一九三四年) 小井川潤次郎
13 吉良上野介義央の切創と之を治療せる栗崎道有(一九三四年) 田中香涯
14 療病呪符其他に就いて(一九三八年) 富士川游
15 日本の癩(一九三九年) 林芳信
16 戸塚の陰嚢象皮病(一九四〇年) 田中香涯
17 人面瘡と人面犬(一九四〇年) 田中香涯
18 長崎市のデング熱流行に就て(一九四二年) 石井信太郎ほか
19 蛔虫談議抄(一九四八年) 小泉丹
20 糞談議抄(一九五〇年) 小泉丹
あとがき
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