文学としてのドラゴンクエスト 日本とドラクエの30年史

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あらすじ

2016年に誕生30周年を迎えた『ドラゴンクエスト』シリーズ。
ドラクエの作者・堀井雄二は「物語を体験する」ゲームを作り続けてきました。
あるいは、あなた自身が主人公になることが出来る
文学を描き続けてきたとも言えるでしょう。
その試みは、実は村上春樹や、ライトノベルといった
日本のすべてのポップカルチャーの進歩と密接な関係があるのです。
いま、ドラクエが切り開いた新しい文学の地平への冒険が始まります。


<目次>

序 章 文学としてのドラゴンクエスト
「たかがゲーム」では済ませられない
ドラクエがポップカルチャーに与えた影響
日本人の感性との特殊な結びつき
堀井雄二はなにを描こうとしたのか

第一章 ドラクエ前夜 ―早稲田大学からポートピア連続殺人事件
学生運動の終わり
早稲田大学漫画研究部
村上春樹が近くにいた
オタクライターの先駆けに
パピコンでプログラミング
鳥嶋和彦との出会い
『ラブマッチテニス』に見えるドラクエの原形
物語を体験するアドベンチャーゲーム
『ポートピア』は謎解きじゃない
漫画の面白さをゲームに

第二章 キミが勇者になる ―ドラクエの誕生
不要なダンジョン
アメリカでRPGを見た
RPGとアドベンチャーの違い
役割性と物語性
ロールプレイとは「ごっこ遊び」?
漫画を体験させる
『指輪物語』から切り離された日本のファンタジー
漫画のゲーム化
めんどくさいリアルはいらない
物語性よりもプレイヤーが楽しいように
キミと主人公を同一化させるロト三部作
主人公そのものになれるのか?

第三章 堀井雄二と村上春樹のデタッチメント ―ロト三部作
現実から離れた村上と堀井
村上春樹の漫画性
“ナマの現実"を描くことこそが文学
純文学もキャラ小説
文学は「現実」を描けない
『世界の終り』と『ドラクエIII』
現実世界の下に広がるアレフガルド
日本人の価値観の変異
虚構によって現実に向き合う
ドラクエ世界へのデタッチメント

第四章 大きな物語の消失 ―天空三部作
物語的な形式をとったドラクエIV
群像劇だから描けた今までにない個性
自分の「登場」する物語
AIがキャラクターに自我を与える
人生を描くドラクエV
主人公が勇者じゃない
人生のような錯覚を生み出す分岐
天空三部作に通底するもの
ドラクエが抱えた奇妙な矛盾
大きな物語が消失した1995年
ポストモダンとしてのドラクエVI
IIIとVIの「ふたつの世界」の差異

第五章 「ドラクエらしさ」の集大成と新しい時代へ ―ドラクエVIIからドラクエVIII
時代との伴走から降りる
アニメに近づく画面演出
過去最長のシナリオで殺伐とした世界を描くドラクエVII
ファイナルファンタジーの暗さとの違い
不意に現れる暗い文学性が「ドラクエらしさ」をつくる
グランド・セフト・オートが開いた自由なゲーム
ドラクエVIIIは自由と物語を両立できたのか
新しい時代の礎

第六章 ネットワーク上のもう一つの人生 ―ドラクエIXからドラクエX
80年代から抱いていたオンライン化への野望
違う人生を送るための世界
多くのプレイヤーが同時に主人公になれるのか?
ドラクエIXの破棄された構想
現実世界を冒険する「すれ違い通信」
ドラクエIXはドラクエらしくない?
ドラクエXで実現した「みんなが主人公」
失敗作だという誤解

終 章 そして伝統へ ―ドラクエXI
「かのように」思わせる錯覚
ドラクエらしさが宿るもの
ドラクエの未来