老人ファーム
動画ポイント対象
550円
母親の病気をきっかけに、仕事をやめ、実家に帰って来ることになった和彦。新しく「老人ホーム」で介護職員として働き始める。毎日、仕事場では高齢者を介護し、家では、母、理恵子の面倒を見る日が続く。唯一の息抜きは、彼女と会うひとときであった。
和彦は施設管理者の後藤のやり方に疑問を持ちながらも、自分なりに考え、入居者の笑顔あふれる楽しい生活を思い描きながら、なんとか仕事をこなしていた。その後藤にひとり反抗していたのは、入居者のアイコであった。彼はそんなアイコの姿に次第に感化されていく。
しかしある夜、アイコが部屋からいなくなってしまう。職員の前で怒りと戸惑いを露わにする後藤。和彦はアイコを探すため、暗闇の中、アイコの名を叫ぶ。皆が楽しく過ごせる生活を夢見ていた彼には、不安の中にも一縷の望みがあった。「きっとアイコさんは外に散歩しに行っただけじゃないか…」と。しかし、見つけ出したアイコの表情は、期待していたものとは全くかけ離れたものだった。
アイコを「老人ホーム」に連れ戻した和彦だが、アイコが抜け出した理由が分からない。その上、どういう訳か、自分に責任を負わされることになってしまう。
2か月後、和彦が久々に老人ホームに戻ると、入居者のために育てた花が無造作に段ボールに投げ込まれていた。思い描いていた「楽しくアットホームな老人ホーム」はなくなっていた。しかし、もう何もできない。ただ花を焼却炉に投げ込むしかなかった。後藤の言うとおり、「余計な情を入れないように働くしかないか…」と。
だが、一つだけ確かめておきたいことがあった。それはアイコの失踪の理由である。夢も希望もない「老人ホーム」で、後藤に反抗していたアイコの気持ちを確かめたい。「きっと、あの人には分かってもらえるだろう」と。
ある夜、和彦はアイコに再会する。しかし、以前のアイコはもうそこにはなかった。彼は、言葉では表現できない悔しさと哀しみに押しつぶされそうになりながらも、アイコに最後まで笑顔を向け続ける。
そしてアイコが目の前からいなくなった時、和彦の胸中にあるわだかまりが全て消え、解放されていく。彼の足は静かに、そして力強く、再び「老人ホーム」へと向かい始める。
- ジャンル
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制作国
日本
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制作年
2019年
- キャスト
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スタッフ
監督 : 三野龍一 脚本 : 三野和比古 撮影 : 金山翔太郎 照明 : 本間光平 録音 : 鉢峯純孝 メイク : 高橋美智 助監督 : 山本屋歩 技術助手 : 山室なつみ カラリスト・整音 : Cinema Sound Works 題字 : 川上萌 メインビジュアル : 田中淳一 劇伴 : ペイズリィ8