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ひきだしにテラリウム
ひきだしにテラリウム
  • 九井諒子先生の短編集『ひきだしにテラリウム』。九井諒子先生といえば、もともと高い構成力で漫画ファンには短編作品の名手として知られていた漫画家です。短いものだとわずか2ページでオチを迎えます。どの作品も過不足なく、自然な流れで話がすっと展開しオチもストンと入ります。作品に必要なものは何かということを客観的に考察する分析力と話をまとめる構成力、短い話でメリハリをつける演出力が九井先生に備わっているからこその芸当です。話のバリエーションも豊富でシュールなコメディ、寓話、人情味にあふれた話、モヤモヤする話など挙げればキリがありません。また作画がそれぞれの話に合わせてタッチを変えているというのが何よりすごい。どの話も違和感がありません。細かく説明したりはせず、知識がないとオチがわからなかったりするかもしれませんが、一般的な教養があれば十分理解できる範囲です。そういう意味では大人向けの作品ですが、考えたり調べたりすることでより世界観が広がることでしょう。そんな素晴らしい読書体験を届けてくれる本作は、漫画界の星新一といっても過言ではない漫画家の神髄が味わえる「マイナーな」名作です。
    aplpalpaさん

    2016/04/01