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前作までシリーズを追っていた読み手は他のメインキャラクターよりいまいち頼りないユーリがメインキャラクターの話と聞いて一抹の不安を抱くだろう。特に前作「機龍警察 自爆条項」のラストにかけての盛り上がりが素晴らしかったので今作はそれを超えられるのか、あまり期待しないで読んだのだが、冒頭からぐいぐいと引き込まれた。前作がアクションシーンや冒険小説の部分が濃かっただけに、今作「機龍警察 暗黒市場」は警察小説の醍醐味を存分に味わうことが出来る。それでいて2章~終章のユーリの過去にまつわる因縁は一種のノスタルジックなジュブナイル的要素も複雑に絡み合っていて、正義について改めて深く考えさせられるだろう。前作までを読んでいなくてもユーリ・オズノフという元ロシア警官に起こった悲劇とそれを克服するラストシーンまで一気に楽しめる小説だが、ぜひ前作も読むことをおすすめする。ある人物の心の成長がたった数ページで表現されていてそれだけでも泣けるからだ。
2015/04/16