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過剰な劣等感や、対人関係への恐怖というような社会的活動の妨げとなる心理の原因を、「愛着障害~子ども時代を引きずる人々~」としてまとめた本。文豪やかつての偉人を愛着障害という観点から分析したことは納得できるところもある。しかし、愛着障害の克服法として、結局「役割を持つこと、仕事をもつこと、親となって子どもをもつこと」としている部分については疑問に思う。精神的に難を抱えながらも何とか仕事をこなせる人については効果的かもしれないが、それらの行為自体が愛着障害的な精神の働きによりそもそも困難な人もいるのであって、やっていれば訓練になりそのうち克服されるというような解決法はある程度軽度のケースにしか適用できないのではないかと思う。また、否定的な認知を解消するための手段として、自分に出来る小さなことから始めて自己有用感を満たしていく手法が紹介されているが、引きこもりなどの重症者に対しては、小さな「できること」を積み重ねて社会復帰に至るまでの時間的猶予を社会が許してくれるのかどうかも疑問である。
2015/04/17