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山本周五郎賞を受賞した『夜は短し歩けよ乙女』で知られる森見登美彦先生にしか描けないであろう名作がこの『新釈 走れメロス 他四篇』です。『走れメロス』や『藪の中』など教科書でもおなじみのそうそうたる文学作品を豪快にパロディしたこの作品は、森見登美彦イズム全開のハイテンションで、全篇を一気に読み切らせる疾走感がありました。現代文の授業を退屈な気分で聞いていたという人でもパロディ元ってどんな内容だったっけと確認したくなるような自由さで思う存分やりきったこの作品を読めば、小説や文学というもののイメージが変わること間違いなしです。そんな豪快な愉快さであふれたこの作品は、森見登美彦作品ではおなじみの京都を舞台としており、他作品と同様に京都愛であふれていて、自分も京都を駆け回っているかのような錯覚を覚えます。京都が好きだ、という人ならばこの作品を読めばキャラクターがいる場所が鮮明に浮かんでくるのではないでしょうか。
2016/04/02