おひで―慶次郎縁側日記―(新潮文庫)
購入した作品の読み方あらすじ
深傷を負って慶次郎のもとに引き取られた娘・おひで。惚れた男にも捨てられてやけっぱちになっていたおひでも、優しくいたわってくれる下働きの佐七には心を開くようになるが、そのとき再び凶刃が振り下ろされた……。行き場のない人間のせつない思いを、温かく受け止める慶次郎、そして晃之助や玄庵たち。お馴染みの山口屋の寮を舞台に展開する人情捕物帖。大人気シリーズ第三弾。
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おひで―慶次郎縁側日記―はNHKでドラマ化された慶次郎シリーズの原作です。短編十編からなる物語ですが、いずれもほのぼのとした味わいのある作品となっています。慶次郎の養子である晃之助は、大変美しい男で慶次郎の娘・三千代と二世を誓い合った間柄でしたが、凌辱されたことを苦に三千代が自殺した後、慶次郎の養子となっています。いろんな場面で三千代の姿が浮かぶ描写があり、作品自体のとぼけた味にものがなしさが加わって奥行きをかもしだしています。正義だけがすべてではない、と、真面目一本で生きてきた人がふとした拍子にふみはずしてしまった道理をそのまま裁かず、彼らの前途を明るいものに切り替える助けをしていく慶次郎はたのもしい人物です。本当の意味での大人ってこういう人なんだろうなと思いました。その一方で、思い人とのつかの間の逢瀬に幾度となく邪魔が入って焦れている記述など、色っぽい要素もところどころに見受けられ、私自身はドラマの方はみたことがありませんでしたが、この粋な感じがドラマ化された大きな要因かなとも思いました。