ぬけまいる
購入した作品の読み方あらすじ
一膳飯屋の娘・お以乃。御家人の妻・お志花。小間物屋の女主人・お蝶。若い頃は「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれ、界隈で知らぬ者の無かった江戸娘三人組も早や三十路前。それぞれに事情と鬱屈を抱えた三人は、突如、仕事も家庭も放り出し、お伊勢詣りに繰り出した。てんやわんやの、まかて版東海道中膝栗毛!
レビュー・口コミ(2件) 一覧へ
江戸の町で起こる話がほとんどという時代小説の中でこちらは江戸から伊勢までの旅物語で物語を読みながら当時の日本の様子を知り、「へえ」とおどろきました。三者三様の事情を抱える主人公たちですが、自分たちの事情をお互いには言いません。「いろいろあるんだろう」と受け止めて、ただそっと寄り添う姿。その親友ならではの距離感と空気感が私にはとてもリアルに感じました。そして、その賑やかな旅の様子は自分が友人と旅行に行った時のことを思い出され、特に主人公の1人お蝶の振る舞いには「いるいる、こういう子」と思わず笑ってしまいます。この作品のタイトルは「ぬけまいる」。つまり「抜け出してお参りする」。日々の生活に追われてちょっと息抜きしたいなと思っている方に是非読んでもらいたい作品。読み終わった後、癒されている自分に気づけると思います。
伊勢神宮へ「ぬけまいる」主役の女性三人がそれぞれ個性豊かで、旅の途中で色々なトラブル巻き込まれながらも各人の得意分野を生かして解決していくさまが面白い。またそれぞれに抱える問題があり、昔馴染みといえどもうまくいかず衝突してしまう、というような描写は読んでいてとてももどかしい気持ちにさせる。各人のわだかまりや衝突が語られているからこそ、ラストでの主人公の選択が印象的なものとなっている。珍道中を描きながら、一方で登場人物の心情を細かく描写している点がこの作品の読みどころだと思う。