暗いところで待ち合わせ
購入した作品の読み方あらすじ
視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった――。書き下ろし小説。
レビュー・口コミ(4件) 一覧へ
乙一さんの作品の中でも特に好きなお話。表紙は怖いですが、ホラーではありません。どうなるんだろうとハラハラしつつも、心温まるシーンがあって、とてもオススメです。
5点おもにキャラクターたちの心理描写に注がれており、湿っぽく淡々とした文章が大半を占めるが、淡々たるなかにも共鳴を呼ぶセンテンスが散りばめられており、独特な世界にもすんなり溶け込める。
5点16歳の時に書いた小説で文芸賞を受賞するなど才能あふれる作家として知られる乙一先生の『暗いところで待ち合わせ』。タイトルと表紙だけみるとなんだかホラー小説のようで初めて目にしたときは敬遠していたのですが、機会があって読んでみると、実際にはホラー小説ではなく人間的な温かみにあふれたミステリー小説でした。暗いところに何か潜んでいるような感覚というのは、人間だれしも一度は味わったことがあるかと思います。ホラー映画や小説では、その不気味さや不安感を怖さにつなげていくという作品は多いですが、これを心地よさや安心感に展開するという乙一先生の発想力、展開力にはうならされます。この作品を読むと、ただ言葉を交わしたりする交流によって得られるのとは違った安心感、心の温かさが味わえると思います。ホラーが苦手な人やホラーを観たあとにこそ一度読んでみて欲しい作品です。また、文章自体は簡単な言葉づかいで表現されているので、普段本をあまり読まない人や中学生高校生の人もきっと楽しめると思います。
『暗いところで待ち合わせ』は2006年映画化も果たした、乙一の代表作の一つです。交通事故で視力を失いながらも一人暮らしをする本間ミチルの家に、殺人容疑で捜索されている大石アキヒロが身を潜めるところから話が始まります。ミチルはふとしたことから家にだれかいると気づきますが、それが悪意のある人だと思えないのでそのまま気づかないふりをして共同生活をすることにします。しかしその生活は長くは続かず、やがて終わりがきてしまうのです…。乙一らしい読みやすさと、心情表現の素晴らしさが融合する素晴らしい作品です。