魔法飛行
購入した作品の読み方あらすじ
私も,物語を書いてみようかな――入江駒子のつぶやきは「じゃあ書いてごらんよ」の声にあっさりと迎え入れられた。幾つも名前を持っている不可解な女の子との遭遇,美容院で耳にした噂に端を発する幽霊の一件,学園祭で出逢った〈魔法の飛行〉のエピソード,クリスマス・イブを駆け抜けた大事件……近況報告をするように綴られていく駒子自身の物語は,日々の驚きや悲しみ,喜びや痛みを湛え,謎めいた雰囲気に満ちている。ややあって届く“感想文”には,駒子の首を傾げさせた出来事に対する絵解きが。第三回鮎川哲也賞を受賞した『ななつのこ』に続く,会心の連作長編ミステリ。
レビュー・口コミ(1件) 一覧へ
主人公の身の回りで起こる日常の謎を綴る短編集。ミステリーとして謎を提示しつつ、短編それぞれにメッセージ性が感じられるところに、作者の技量を感じる。表題作の「魔法飛行」は特に秀逸で、ミステリーという非常に論理的な世界の中に、巧妙にロマンチックな描写を織り込んだ、素晴らしいストーリーだと思った。上質な恋愛小説を読んだかのような読後感があり、何度でも読み返したくなる小説である。