ななつのこ
購入した作品の読み方あらすじ
ファンレターとラブレターは、勢いで出すに限るのだ。――短大に通う十九歳の入江駒子は『ななつのこ』という本を衝動買いし、読了後すぐに作者へファンレターを書こうと思い立つ。先ごろ身辺を騒がせた〈スイカジュース事件〉をまじえて長い手紙を綴ったところ、思いがけなく「お手紙、楽しく拝読致しました」との返事が。さらには、件(くだん)の事件に対する、想像という名の“解決編”が添えられていた! 駒子が語る折節の出来事に打てば響くような絵解きを披露する作家佐伯綾乃、二人の文通めいたやりとりは次第に回を重ねて……。伸びやかな筆致で描かれた、第三回鮎川哲也賞受賞作。
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表題作を含め7つの短編で構成されている作品。ミステリーでありながら、大学生という大人でも子供でもない時間を見事に描き出している作品だと思う。「ななつのこ」という作中作の世界が、そのまま表紙に描かれていて、日本の原風景といった風情がすごく懐かしい気分にさせてくれる。日常の謎を解きつつも、主人公の、大人になりきれず揺れ動く感情が大切に綴られていて、ミステリーの枠組みを越えて楽しめるストーリー。