深川澪通り燈ともし頃
購入した作品の読み方あらすじ
江戸で5指に入る狂歌師となった政吉は、野心のあまり落ちこぼれて行くが、唯一救いの燈がともっていて・・・。幼い頃親を失ったお若は、腕のよい仕立屋になれたが、1人の心細さがつのる時は、まっすぐに深川澪通りに向って・・・。辛い者、淋しい者に、無条件に手をさしのべる木戸番夫婦を描く、傑作時代長編。(講談社文庫)
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深川澪通り燈ともし頃はNHKで「とおりゃんせ?深川人情澪通り」というタイトルでドラマ化されたシリーズものの小説の一編です。訳アリの木戸番夫婦のもとに、江戸の下町で必死に生きている人々が訪れ、癒されていくのがこのシリーズ。今回のお話では、政吉とお若が物語の軸になってお話が展開していきます。派手な内容ではなく、どちらかといえば登場人物の暗い一面や、情けない部分に光をあてながら話がすすんでいくので、かっこいい生き方の人はほぼいないと言ってもいいかもしれません。でも、そんなふうにしか生きられない彼らを否定も批判もせず、気遣う木戸番夫婦、そして周囲の人たちに支えられ、彼らも立ち直っていく、もう一度やり直そうと思う。やわらかくあたたかい筆致に、作者の穏やかなまなざしを見る思いがしました。