男の愛
町田康 1,870円
あらすじ
生産能力も生産基盤も持たない、ただその威名・威勢だけで飯を喰っている、やくざにとってこの、名前が売れる、というのはなにより大事なことで、出世前のやくざはなんとかして名前を売ろうとした。「あの野郎、近頃、売ってやがるな」というのは、その名前が多くの人に知られ始めた。メジャーデビューした、みたいな意味である。
そういう意味では次郎長は順調にやくざデビューを果たしたというわけである。
しかしなんでもそうだが、デビューするだけなら誰にだってできる。問題はデビューした後、どれだけ順調に活動を続けられるかで、いくら華々しくデビューしたところで、その後が続かなければ、早くも翌年には、「あー、そう言や、そんな奴いたっけなあ」てなことになってしまう。そうならないためには、やくざだってなんだって、普段の地道な活動、たゆまぬ努力がなによりも大事なのである。
(『最終的には銭金』より)