おこりたくないおこりんぼのラノ
あらすじ
ティラノサウルスのラノは花が大好き。ほかのティラノサウルスの子どもたちが好きな相撲や狩りの練習が好きではない。そんな、おとなしいラノに、いたずらな小恐竜トロオドンたちがちょっかいを出してくる。ラノが触られるのを嫌うしっぽに、わざとかみついたり、くすぐったりして・・・。そんなときラノは、花の匂いをかいで、じっと耐えるのだが、イライライライラ・・・。とうとう、我慢の限界を超えたラノが、大声で叫ぶ。「ガオ~!(あっちへいけ!)」 大声で怒りを爆発させた後、ラノはいつもせつない気持ちになって落ち込むのだった。「ぼくだって、怒りたくなんかないのに・・・。どうしてみんなは、ぼくの嫌なことばかりするのかな・・・。」
大事な花を踏まれたときも「ガオ~!」、しっぽを触られたときも「ガオ~!」。
「ガオ~!」といつも怒っているラノは、周囲から「おこりんぼ」だと思われているが、本当は違うのだ、と読み手には伝わる。ラノには怒ってしまう理由があるのだから。本当は怒りたくないのに怒ってしまう・・・そんな「きもち」について考える絵本。
アンガーマネジメントがテーマの本書だが、世にある「アンガーマネジメント」がテーマの絵本は、「怒りを我慢しよう」「怒らないように、努力しよう」的な視点で描かれた本が多い。しかし、本書は違う。怒る側にも理由があることを知り、周囲が「あの子はどうして怒っているのか」を考え、例えば「後ろから触られるのが嫌いなのに、後ろから触られたから怒ったんだね」と、怒っている相手を理解しようとする共感力を育む、そういう視点で描かれた絵本である。
本書を含むこの「ダイナソーキッズ きもちのえほん」シリーズは、子ども時代に育みたい重要な能力として最近注目されている非認知能力(※向上心、共感力、コミュニケーション能力、忍耐力、思いやりなど、数値で測ることのできない人間的な力)を高めるための様々な工夫を盛り込んでいる。
その一つが巻末の「おうちの方へ」である。そこでは、幼児期の言葉の発達が専門の國學院大學吉永安里教授の監修のもと、読後に絵本の理解を深めるための問いかけ例を掲載。その回答の例として実際に子どもたちが答えた言葉を、「ダイナソーキッズ公式サイト」に掲載している。