康太の異世界ごはん 8
あらすじ
ヒーロー文庫12周年! コミック版も大好評! 全滅した村で出会った女性の正体は? 異世界トリップした居酒屋店主の運命は?
ヘカトンケイルを滅亡寸前まで追い込んだ残桜症禍から、五年の歳月が過ぎた。
踏鞴家給地でのんびり過ごしていた康太は、
ピスフィの熱烈な誘いを受けて熱帯の島しょ部、香料諸島(ヴィトネシア)へと赴く。
落ちているものをすぐ食べる悪癖を買われた康太が、
『ピーダーとネイデル、クエリアの会社』のプラントハンティング部門に出向したかたちだ。
到着したアレナリア島で、ふたりは、無人化した村落にただひとり佇む女性と出会う。
椒美(はじかみ)と名乗った女性は、
アレナリアのひとびとが残桜症によって全滅したことを告げた。
また、椒美は康太とピスフィを冷たくあしらい、遠ざけようとする。
だが、食卓を囲む中でゆっくりと歩み寄りを見せる。
食材を集め、調理し、いただき、語らう。
甘い香りで驚くほど辛くてすっぱい青マンゴーのアチャール、
魚のだしをしみじみ感じる鯛あごだしカレー、アオモジが香る鯛皮スパイス揚げ、
青マンゴーしりしり――康太がこの世界でたゆまず続けてきた他者との触れ合い方で、
すこしずつ打ち解けていく。
一行はアレナリア島を脱し、
ヴィトネシア最大の港市国家テルス・ル・エルーヴラに辿り着く。
行くあてのない椒美をピスフィはヘカトンケイルに招き、彼女は承諾する。
なつかしき顔ぶれと語り、食べ、変わりゆくヘカトンケイルとひとびとの関係性に触れ、
再会を約束して別れた康太。
その足は愛しき踏鞴家給地へと向かう。
康太たちは、気づいていなかった。
椒美を名乗る女性の正体が、この世界の歴史を大きくねじ曲げ、
残桜症をもたらしひとびとを虐殺した、
めおと神アノン・イーマスのかたわれであることに。
そして彼女が、未だ胎の内に致死の感染症を隠し持っていることに。
中野 在太(ナカノアルタ):静岡県在住。本作にてデビュー。
七和 禮(シチワレイ):イラストレーター。「汐汲坂のカフェ・ルナール 」「転醒のKAFKA使い」「お嬢様が、いけないことをたくらんでいます!」「放課後四重奏」「探偵失格」他、ラノベ・TCG等のイラストを担当。