法とは何か
あらすじ
人が生きていく上で、法はどのような働きをするか。先人の思想の系譜を読み解き、法と共により善く生きる道を問う、法思想史入門書。ロングセラーの新版。
現代の日本の法律家の大部分はーーおそらく世界の法律家の大部分もーーカントやヘーゲルなど読んだこともないし、そんなことを意識したこともないのではないでしょうか。それでも、過去の思想は意識されることもなく、現に生きている人々の思考を捉え、束縛しているものです。カントやヘーゲルに捉えられているのはましな方で、訳の分からない三流思想家に操られていることも少なくありません。それと意識することもなく過去の思想に操られるよりは、自分がどのような立場を取っているか、それを明確に意識した上で、とるべき行動を判断する方が望ましいはずです。(「あとがき」より)
【目次】
はしがき
序章 法はあなたにとってどういう存在か
I 「飼い馴らす」ことで得られるかけがえのなさ
II 価値があるものは限られる
III あなたにとっての国の価値
IV 本書の課題
文献解題
第1部 国家はどのように考えられてきたか
第1章 何のための国家か
I 権威に従う理由
II 国家が権威を持つとき
III 国家の権威の限界と個人の選択の範囲
IV 小結
文献解題
第2章 平和と自己防衛を目指す国家──トマス・ホッブズ
I 生の意味──モンテーニュからグロチウスへ
II 判断基準となる国家の設立
III ホッブズと宗教
文献解題
第3章 個人の権利を保障する国家──ジョン・ロック
I 自然状態における個人の自由
II 政治権力はいかにして樹立され、解消されるか
III 最終判断は神による裁き──抵抗権論
IV ロック政治思想の限界と可能性
文献解題
第4章 自由を保全する国家──ジャン・ジャック・ルソー
I ルソーの問い
II 一般意思とは
III 大衆を導く世にも稀な「立法者」
IV ホッブズを読むルソー
文献解題
第5章 永遠に完成しない国家──イマヌエル・カント
I 他者の敵対心からの保障
II 定言命法と道徳格率の多様さ
III お世辞は反道徳的か
IV 「私の」社会の法秩序
V 人間性というねじ曲がった素材
文献解題
第6章 人々がともに生きるための立憲主義
I 公と私の区分の必要性
II 基本的人権の保障と政教分離
III 正義の状況
文献解題
第2部 国家と法の結びつきは人々の判断にどう影響するか
第7章 法の規範性と強制力──ケルゼンとハート
I ザインとゾルレン
II 法予言説の問題点
III ケルゼンの「根本規範」
IV ハートの「認定のルール」
V 法による強制をどう見るか
文献解題
第8章 法と道徳の関係──ハートとドゥオーキン
I 道徳をどうとらえるか
II 裁判官の良心
III 「正解」を求めて
IV すべては解釈なのか
文献解題
第9章 法が法として機能する条件
I 「法の支配」
II 法と道徳の必然的関係?
III 「法の支配」の限界
IV プラトンとアリストテレスの考えた法の限界
文献解題
第10章 法と国家──どちらが先か
I 憲法がないと国家もない
II 法人としての国家
III 憲法制定権力の存否
IV 国民の代表とは
V 宮沢俊義の「国民代表の概念」
VI ケルゼンの民主政観
文献解題
第3部 民主的に立法することがなぜよいのか
第11章 なぜ多数決か
I 人民による人民の支配
II 一人一人の意見の尊重
III 議会の選挙と人民投票
IV 正解を求める手段としての多数決
V 多数決の過ちをどう防ぐか
文献解題
第12章
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