人はなぜ神話〈ミュトス〉を語るのか 拡大する世界と〈地〉の物語
あらすじ
神話は、社会に生きる一人一人が記憶を承け継ぐために、異なる層/相で紡がれ続ける。生まれた時代、ジェンダー、ナショナリティ、「人種」、政治的立場が異なっても、人は自らの現在の生と、自らが生まれ育った〈地〉を、それぞれの「神話」を通して記憶のなかで結び合わせている――。
いままで語られてきた「神話」は何を伝えうるのか。
あるいは、今、新たにどのような「神話」が求められるのか。
思考の枠組みの変化・生成を促すものとして「神話」言説が果たす役割を明らかにし、権威化と相対化を繰り返しながら変化をつづける、「神話」の実相を追究する。それはまさにいま現在の、現実の問題である。
本書は、さまざまな相貌を見せる神話〈ミュトス〉という言葉をとらえるために、
以下の3部立てで構成される。それぞれの部で中心となるキーワードも挙げる。
▼第I部 ヨーロッパ社会における「知」の体系化――言葉で紡ぐ〈地〉
【キーワード】キリスト教、ウェルギリウス、聖書、西洋古典文学、体育、J・C・F・グーツムーツ、植物学、ハインリッヒ・マルツェル、ギリシア哲学、プラトン、木村鷹太郎
▼第II部 日本における「神話」の拡大――〈地〉の物語を編む
【キーワード】平田篤胤、神道、古事記、本田親徳、児島高徳、神武天皇、橿原宮、総力戦体制、日本の神話学、植民地
▼第III部 「新」世界とせめぎあう近代知――〈地〉の記憶をまとう
【キーワード】探検家、博物学、ゲオルク・フォルスター、アレクサンダー・フォン・フンボルト、エルンスト・ヘッケル、アトランティス、レムリア、ムー大陸、マヤ神話、ポポル・ヴフ、ブラック・パンサー、マーベル・コミック、黒人
本書は、古代のギリシア哲学やキリスト教世界、総力戦体制下の近代日本、マヤ文明やムー大陸、マーベルコミックやその映画などの21世紀のポップカルチャーにいたるまで、扱う時代や地域、専門の異なる十六本の多彩な論考から、この問いへの応答を試みる。
執筆は、清川祥恵/南郷晃子/植 朗子/野谷啓二/上月翔太/田口武史/里中俊介/山下久夫/斎藤英喜/藤巻和宏/鈴木正崇/平藤喜久子/横道 誠/庄子大亮/Jose Luis Escalona Victoria/鋤柄史子。
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