恐竜時代が終わらない

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あらすじ

リアルにファンタジーが溶け出し、新たな世界へと導く山野辺太郎の真骨頂!

やわらかい言葉と適度なペーソスで、作者は奇想を真実に変える。「恐竜時代」とは、人を信じるための胸のくぼみに積み重ねられた、記憶の帯だ。私たちの心の地層の底にもそれは眠っていて、あなたに掘り起こされる日を静かに待っている。
――堀江敏幸

「恐竜時代の出来事のお話をぜひ聞かせていただきたい」。

ある日「世界オーラルヒストリー学会」から届いた一通の手紙には、こう記されていた。

少年時代に行方をくらました父が、かつてわたしに伝えた恐竜時代の記憶。語り継ぐ相手のいないまま中年となったわたしは、心のうちにしまい込んだ恐竜たちの物語――草食恐竜の男の子と肉食恐竜の男の子との間に芽生えた切ない感情の行方を、聴衆の前で語りはじめる。

食う者と食われる者、遺す者と遺される者のリレーのなかで繰り返される命の循環と記憶の伝承を描く長編小説。

表題作ほか、書き下ろし作品「最後のドッジボール」を収録。

【目次】
恐竜時代が終わらない
最後のドッジボール

【著者】
山野辺太郎
1975年、福島県生まれ。宮城県育ち。東京大学文学部独文科卒業、同大学院修士課程修了。2018年「いつか深い穴に落ちるまで」で第55回文藝賞を受賞。著書に『孤島の飛来人』(中央公論新社)、『こんとんの居場所』(国書刊行会)などがある。