それは私がしたことなのか 行為の哲学入門

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あらすじ

倫理的思考の故郷へ

正しい行為とは何かを問う哲学書では以下のような極限的事例が議論されます。「列車が暴走し線路上に立つ5人を轢かんとしている。ただし、眼前のレバーを引けば列車は1人しか轢かない別の線路へと入る。引くべきか否か、その選択はどんな理論で正当化されるのか・・・・・・」。しかし、ジレンマに陥った中での苦渋の選択というものから、倫理について多くを学べるのでしょうか。我々の目指すものは、こうした状況で躊躇せず正しい行為を選び取れる、ということではないのではないでしょうか。筆者は、我々の理解から乖離しない倫理の解明に向けて、自由意志の有無、意図と行為の関係、さらには義務や責任と運との関係といった「行為」の深い謎へと切りこみます。ままならぬ世界で不完全な道徳行為者として生きる人間の核心に迫る哲学入門書。

【目次】
はじめに
第1章 行為の意図をめぐる謎
1―1 「手をあげる」―「手があがる」=?
1―2 出来事を引き起こす心の働きとは何か
1―3 意図をめぐる問題―そもそも意図とは何か
1―4 機械の中の幽霊―ライルによる物心二元論批判
1―5 機械の―「心→脳」と巻
1―6 決定論を支持するかに見えたる一科学的な知見の検討
コラム・ 心身問題の行方

第2章 意図的行為の解明
2―1 意図と信念の諸特徴
2―2 心をめぐる「一人称権威」は何を意味するのか
2―3 心の「隠蔽説」を超えて
2―4 行為の理由と原因
2―5 心は身体の中には存在しない
2―6 意図せざる行為の存在
コラム・ 現代の英語圏の行為論の流れ

第3章 行為の全体像の解明
3―1 意図性の薄い行為―やむをえない行為、他人からの強制に従う行為
3―2 意図せざる行為・―「悪質な過失」について
3―3 意図せざる行為・―「純然たる過失」について
3―4 意図せざる行為・―悲劇と行為者性
3―5 意図せざる行為の全体像
3―6 行為の全体像
コラム・ 共同行為について

エピローグ 非体系的な倫理学へ

【著者】
古田 徹也
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部 倫理学研究室 准教授、放送大学 客員准教授。