ねむりたりない

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あらすじ

母さんの自作だったと後に知るお伽話で燃えていた町

幻の心臓が鳴りやまない
燃えやすくて凍りやすい感情に居場所を与える。
今ここに生きるために。未来を確かめるために。
─東 直子
【5首】
母さんの自作だったと後に知るお伽話で燃えていた町
くるぶしは小さな果実 夕闇に熟れゆくきみを起こせずにいる
あの女も使ったかなぁ出汁巻のうずに差し込む基礎体温計
一歩ずつ脱ぎ捨てていくサンダルのごときクリップ海に焦がれて
枯れるのも咲くのも花の意志ならばわたしの体はだれの福音

【目次】
I ミナモ
きみも海鳴り
都庁
庭のない家
糸より細く
リビングルーム

II ツツジ
ユーラシア
永い背泳ぎ
しゅらしゅら
あまおう
夕方の蜘蛛

III コハク
ジューンブライド
月餅
だれかの福音
ダウンカレント

IV ルリ
夏の氷点
魔物
実在しない鳥
未明
気球のゆくえ
産毛にミルク

解説 肉体と感情が落ち合う場所 東 直子
あとがき

【著者】
櫻井朋子
1992年生まれ。
2017年、新聞歌壇に投稿を始める。
同年、東京歌壇(東京新聞・東直子選歌欄)年間賞。

東 直子