ナポレオンの柳

購入した作品の読み方

あらすじ

2021年5月5日はナポレオン没後200周年!

2018年、セントヘレナ島には空港がオープン。
観光もついに現実のものとなった。
その土地で、ナポレオンは52年の生涯を閉じた。
本人の希望で、生前その下で瞑想していたと言われる
柳が、死後の埋葬場所となった。
本書では、ナポレオンが出会ったその柳について着目する。
「ナポレオンの柳」について、日本ではほとんど知られていない。
ナポレンに関する書籍や研究はもちろん、彼が晩年を過ごした
セントヘレナ島の捕囚や死を扱った書籍でさえ柳に注目したものは
ないのだ。「ナポレオン伝説の形成」を読み解いた本においても、
「暗黒のナポレオン伝説」がナポレオンの死によって
「ナポレオン崇拝」に変化する興味深い分析がなされているが、
柳には触れられていない。
しかし、終の住処セントヘレナ島で、ナポレオンが柳と出会った
事実こそ、ナポレオンの叙事詩的生涯を締めくくる「幸運な出会い」
だったと言えるのである。それは、メランコリーな柳が枝を垂らす
ナポレオンの墓のイメージが国を超えて多くの人々の口にのぼり、
文章にされ、絵に描かれ、歌に歌われたからだ。

著者は、アメリカの墓地研究者として古い墓地を訪れたとき、
多くの墓石に柳を見つけていた。柳は墓石に描かれただけでなく
墓園にも多く植えられているのである。なぜアメリカの墓地では、
柳を多く目にすることになるのか?研究を進めたところ、柳は
アジアからヨーロッパ、そしてアメリカへと導入・伝播される中で、
その意味を変化させ、死・葬儀のシンボルとなり広く普及していた
ことが分かった。
本書は、その「柳」研究を起点とし、西洋人の柳への熱狂、
セントヘレナ島に柳が存在した由来、そして、それが島に英国庭園
風景を模した絵画のような景観を出現させた歴史を辿り、
最後には、「ナポレオン伝説」をつくりあげたまさに張本人が
「柳」であることを論じる。


【目次】
第一部 ナポレオンの柳
 第一章 西洋人と柳の文化誌
 第二章 ナポレオンの柳
第二部 墓地と〈ピクチャレスク〉――「絵のように美しい」アメリカの墓地
 第三章 田園墓地と〈ピクチャレスク〉な景観の創造
 第四章 田園墓地の「進化」の先に見えてきたもの