大使館の庭
購入した作品の読み方あらすじ
大使館に勤務していると、職業柄自分が日本人であるということを強く意識します。在勤したことのある国が多くなり外国暮らしに慣れてきても、そうした意識はなくなりません。国際統計などを見ていても先ず日本の順位はどの辺かが気になり、悪疫の流行とか資源価格暴騰などのニュースを聞くとすぐ日本はどうかと心配します。常に日本を世界の中に置いて見る癖がつき、日本人の能力・性向や日本の社会・歴史・言葉などを他国のそれと比べて考えるようになります。国際機関に勤務してもそうしたことが続き、それが昂じると問題を広く人類の歴史とか人間のあり方などにも結びつけて考え、関係する本を読んだり調べたりするようになります。
私はそうしたことが習慣となり時間に余裕もありましたので、考えた結果を随筆にして外務省の関係職員団体の会報に毎月投稿するようになりました。投稿を始めてもう何年にもなりますが、最近、熱心なお誘いを受け、その内の百編をこのように纏めて本にすることにしました。
私が考え書き続けてきたことは、同じ時代に生きる日本のどなたもが関心を持たれる問題だと思います。本当は、お会いして話し合ったり議論したりしたいのですが、それはかなわぬことです。せめてこの本を手にされて、こんな事をこんな風に考えているのかと楽しく読んでいただき、足らないその先を更に考える喜びを味わっていただきたいと願っています
一編の随筆が本の開いた二頁に納まり独立した内容になっています。目次を見てご関心のある主題を選んで読んでいただくことも、適当な所を開いて拾い読みしていただくこともできます。