空白小説
あらすじ
シリーズ累計50万部突破!
『54字の物語』の著者が贈る、5分で読める49話
『空白小説』は、書き出しと結びの文だけがはじめから決まっているショートショート集です。
その間の空白をどう埋めるかで、物語は予想できない方向へと展開し、書き出しと結びのもつ意味は大きく変わります。
あなたは「空白」の展開を予想できますか?
○吾輩は猫である → 名前はまだない
○犯人はこの中にいる → 私がやりました
○昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました → いつまでも幸せに暮らしました
など
----
(本文より)
○吾輩は猫である→名前はまだない
吾輩は猫である。誰よりも自由な猫である。
家の塀にひょいと飛び乗り、ふわぁとあくびをする。そこへひとりの少女がやってきた。少しだけ撫でさせてやろうと「にゃあ」と声をかける。しかし少女は「ひっ」と悲鳴をあげ、どこかへ逃げていった。
しばらくすると怪訝な顔をした人間の大人たちが集まってきた。あっという間に屈強な男たちに取り押さえられ、吾輩は眠らされてしまった。
目を覚ますと、吾輩は薬品の匂いのする部屋にいた。周りで白衣を着た男たちが首をかしげている。
「自分を猫だと思い込んでいるようです」
「見た目は中年の男だぞ」
「ですが実際に尻尾まで生えてきています」
「海外でも最近似たような症例が増えているとか」
「病名は?」
「発見されたばかりの病気だ。名前はまだない」
(『自由』より要約)
※本書は広い世代の方々にお読みいただけるよう、漢字にはルビを多めにふっております。
【著者プロフィール】
氏田雄介(うじた・ゆうすけ)
平成元年、愛知県生まれ。企画作家。株式会社考え中代表。
著書に、1話54文字の超短編集『54字の物語』シリーズ(PHP研究所)、世界最短の怪談集『10文字ホラー』シリーズ(星海社)、当たり前のことを詩的な文体で綴った『あたりまえポエム』(講談社)、迷惑行為をキャラクター化した『カサうしろに振るやつ絶滅しろ!』(小学館)など。
「ツッコミかるた」や「ブレストカード」など、ゲームの企画も手がける。
小狐裕介(こぎつね・ゆうすけ)
小説家。
2017年「ショートショートの宝箱」(光文社)に『ふしぎな駄菓子屋』が掲載され作家としてデビュー。
幼い頃から物語を作り続け、漫画制作・映画製作などを経て2010年頃からショートストーリーの執筆を開始。
著書に、「3分で“心が温まる”ショートストーリー」「3分で楽しい! “動物”ショートストーリー」(共に辰巳出版)などがある。
ブログで毎日、ショートストーリーを公開中。
水谷健吾(みずたに・けんご)
1990年、愛知県生まれ。作家、脚本家。
原案を担当した漫画『食糧人類』(講談社)は260万部を突破。
現在はショートショート小説、チャットノベル、音声コンテンツ、舞台脚本を中心に活動。
舞台『捏造タイムスリップ』が2019年佐藤佐吉優秀脚本賞、舞台『つじつま合わせのタイムパトローラー』が2020年劇団EXPO最優秀作品賞を受賞。
【イラストレータープロフィール】
小林ラン(こばやし・らん)
神奈川県横浜市生まれ。イラストレーター・アーティスト。
やわらかなフォルムと鮮やかな色彩、時には不思議なニュアンスを用い、ワンダーな世界を描く。
これまで仕事をした媒体は、書籍、雑誌、広告、ウェブサイト、動画のイラストレーション制作など。
オリジナルの作品展示も定期的に行なっている。