美術教育学叢書2

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あらすじ

美術教育史研究の現在地点を知る必読の書

本書は、美術科教育学会創立40周年を記念する事業として企画された『美術教育学叢書』の第2弾であり、これまで美術教育史研究を先導し牽引してきた金子一夫氏の責任編集による「美術教育史の歴史」をテーマとする論文集である。本書の編集上のねらいは、学会創立40周年を機に、美術教育学における歴史研究の成果を整理し、その到達地点を確認するとともに、今後の課題を明らかにすることである。それが金子氏執筆の「序章」に記された「『美術教育史の歴史』に範囲を絞り、美術教育史研究のレビューを踏まえた問題提起をする」という言葉の意味であろう。

本書には序章を含め17編の論稿が収録されている。美術教育史の基本問題について考察し、各章を論説した序章を除く16編の論稿には、大きく分けて二つの方法あるいは観点が見られる。一つは対象領域に関わる歴史研究(群)を時間軸上に位置づけ、その変化の有無や様態、あるいは課題を明らかにしたものである(第1,2,3,4,10,12,13章)。そしてもう一つは、特定領域(テーマ)に関わる美術教育史を記述しようとしたものである(第5,6,7,8,9,11,14,15章)。いずれも優れた知見と知的刺激に満ちており、美術教育史研究の重要性を再認識させられるとともに、未開拓の研究領域の広大さを実感させられる。

本書は、美術教育史研究が到達し得た現在地点を確かめ、残された課題を知るための必読の書である。