アローナの嫁取り祭り【分冊版】 医者と大工
あらすじ
砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
女大工のミリアムは、怪我をするたびに医師ジェラルドの治療を受けている。彼は幼いころアローナを出ていった母とともに王都で暮らしていたが、五年ほど前、亡くなった父親の治療院を継ぐためにこの街に戻ってきた、街で評判の腕のいい医者である。だが、亡き父と同様、医者の不養生を地で行く生活。けが人やら病人やらの診察で多忙な祭りの夜、がようやく一息ついたジェラルドの元に、ミリアムが差し入れを持って訪ねてくる。そのまま部屋で酒を酌み交わし、よもやま話に花を咲かせる。だが話題が結婚に及んだ途端に空気が変わる。ミリアムには“嫁にいけない”理由があったのだ――