アローナの嫁取り祭り【分冊版】 パン屋と計算係
あらすじ
砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
役場の“計算係”と言われ、皆から頼りにされているステラはアローナきっての才媛。計算好きが高じて、進学して高等な数学を習得、さらには都で財務会計の専門教育を受けて戻ってきた。だが、文字通りなりふり構わず学問や仕事にまい進してきたため、婚期を逃しかけている。そんな彼女が想いを寄せているのは、パンの店『ポラール』のカイト。仕事帰りに、わざわざ寮と反対側の『ポラール』に通うのが日課となっている。はじめて店に訪れた時の優しい笑みに心を射抜かれてしまった。だがカイトは自分より一つ年下。地味で年上の自分を好きになるわけがない……。はなからそう決めつけていたステラだったが、同僚のサミーに励まされ、精一杯のおしゃれをして、祭りの日を迎える――