葬儀会社が農業を始めたら、サステナブルな 新しいビジネスモデルができた
戸波亮
市場が縮小する業界で生き残る!
外注業務の内製化を突き進めてたどり着いた異業種参入
経営危機から8つの事業を展開、
資産総額27億円まで成長できた戦略とは――
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日本の人口が減少するのに伴って、
市場規模が縮小し厳しい状況に立たされている業界は多くあります。
著者が身をおく葬儀業界もその一つです。
人口減少は死亡する人が減ることを意味し、葬儀の減少に直結します。
著者は祖母が始めた葬儀会社を1998年に引き継ぎましたが、
死亡者数減少によるマーケットの縮小が目に見えているのに加え、
葬儀の規模も縮小傾向にあり、葬儀単価は右肩下がりで
事業の先行きに強い危機感を抱いていました。
しかし、その25年後の2023年現在、著者の会社は葬儀業を含めて
8つの事業を展開し、資産総額は27億円、年間売上高は14.5億円、
ROE(自己資本利益率)は10%、自己資本比率は40%を超えています。
このなかで、葬儀業と並ぶ柱になっているのが農業です。
葬儀会社が農業をやっているというと多くの人はまったく関連のない
異業種に参入したと思うかもしれませんが、そうではありません。
著者は業界が縮小するなかで売上を伸ばすのではなく、
利益率を改善させる方向に舵を切りました。
その際に取り組んだのが外注業務の内製化です。
もちろん内製化には固定費もかかりますが、固定費が負担にならないよう
本業とのコストシナジーを考え、他の事業でもリソースを活用できるよう
シミュレーションを繰り返しました。
そして内製化によって利益率の改善が実現できたことで、
結果的に農業をはじめとする複数の異業種参入につながったのです。
葬儀業界の外注業務は多岐にわたります。葬儀で使う生花の仕入れ、
葬儀や法事の仕出しの製造などがありますが、著者はそれらを次々と内製化していきます。
たとえば生花であれば蕾のうちは一般用に販売し、
その後開花した花は葬儀用に使用することで無駄をとことん省いたのです。
さらに葬儀の返礼品として使える商品開発にも乗り出し、着目したのが米でした。
米であれば返礼品としてだけでなく、仕出しにも活用できます。
そこで北海道に農業生産法人を設立し農業に参入しました。
7haからスタートした田畑の面積は、今では52haにまで拡大し、
葬儀業との両立で経営は安定しています。
こうした経験から、既存事業の外注業務に目をつけて取り込みながら
新たな分野に参入すれば、中小企業にとっても大きなビジネスチャンスがあると著者は主張します。
本書では著者がどのようにして異業種に参入して成功したのか、
その視点や発想、取り組みを紹介します。
経営者にとって新たなビジネスモデルを創出し、未来を切り拓くためのヒントがつまった一冊です。 1,672円